2020 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢の制御を介した胎生期低栄養に起因する生活習慣病の予防に関する研究
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19K05862
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
平井 静 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (90432343)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 胎生期低栄養 / 糖質制限 / 腸内細菌叢 / 無菌マウス / 菌叢移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究において、妊娠期糖質制限を行ったC57BL/6Jマウス出生仔の離乳直後の糞便を用いて腸内細菌叢および糞中短鎖脂肪酸濃度の解析を行ったところ、糖質制限群の仔マウスの腸内細菌叢は対照群の仔マウスの腸内細菌叢とは異なるクラスターを形成していること、また糖質制限群では体重減少に伴い増加することが報告されているPrevotella/Bacteroides(P/B)比が有意に上昇しており、糞中短鎖脂肪酸量も増加傾向にあることが認められた。これらの結果より、妊娠期糖質制限による次世代の肥満・糖代謝改善作用に、腸内細菌叢や短鎖脂肪酸の変化が関与する可能性が示唆された。 そこで本年度の研究では、この可能性について検証するために、妊娠期に摂食量の制限による40%エネルギー制限(総エネルギー制限群)または糖質のみの制限による40%エネルギー制限(糖質制限群)を行ったC57BL/6Jマウスから出生した仔マウスの離乳直後の糞便から調整した腸内細菌叢をそれぞれC57BL/6N無菌マウスに移植するとともに高脂肪食を負荷し、糖・脂質代謝に及ぼす影響を検討することを試みた。 その結果、対照群および糖質制限群の腸内細菌叢を移植したレシピエントマウスは、移植の翌日から体重が減少し、対照群では1週間後には回復が認められたものの、糖質制限群ではほぼ全個体が3日以内に死亡した。総エネルギー制限群では体重減少は認められなかった。腸内細菌叢を移植したレシピエントマウスの盲腸内容物を用いて感染症検査を行ったところ、高い致死性が報告されているCitrobacter rodentium、Salmonella spp.、Clostridium piliforme(Tyzzer菌)は全てのマウスにおいて検出されなかった。以上の結果から、糖質制限群のレシピエントマウスは感染症以外の原因で死亡した可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに実験を進め、予想外のものではあったものの結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果より、マウスの妊娠期糖質制限による次世代の腸内細菌叢変化が、まだ体重や代謝に影響の認められない離乳直後の仔において生じていたことから、胎生期糖質制限による成獣後の肥満・糖代謝改善作用が腸内細菌叢の変化を介して生じている可能性が示唆された。そこでこの可能性を検証するために、本年度の研究において胎生期栄養制限を行った仔マウスの腸内細菌叢を無菌マウスに移植したところ、胎生期糖質制限群の菌叢を移植したレシピエントマウスでは移植後3日以内にほぼ全個体が死亡してしまった。 死亡した個体の感染症検査を行ったところ、致死性の高い菌は検出されなかったことから、腸内細菌叢の移植操作や移植サンプル濃度に問題があった可能性や、移植した菌叢が無菌マウスにおいて急激にエネルギー代謝を亢進した可能性などが考えられたため、今後は、これらの点を中心にレシピエントマウスが死亡した原因を追究するとともに、実験条件を見直し、再度、胎生期糖質制限マウスの腸内細菌叢が代謝に及ぼす影響を解明するための移植実験を行う予定である。
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Research Products
(1 results)