2020 Fiscal Year Research-status Report
二段階発酵茶「碁石茶」の苦味は環状ジペプチドに起因するのか?
Project/Area Number |
19K05864
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
受田 浩之 高知大学, その他部局等, 副学長 (60184991)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島村 智子 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50350179)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 後発酵茶 / 碁石茶 / 二次機能 / 味覚センサー / 苦味 / 環状ジペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
好気発酵と嫌気発酵の二段階の発酵を経て製造される碁石茶は、際立った酸味とマイルドな苦味を呈することが特徴である。酸味は嫌気発酵段階で生成する乳酸に起因するが、二段階発酵を経た後に大幅に含量が低下するカテキン類に代わる苦味因子は不明である。本研究では、碁石茶の味に影響を与える苦味因子の解明を目的として、成分分析結果と味覚センサーによる客観的な官能評価結果を関連付けていく。特に、加熱・発酵食品に含まれ、かつ苦味成分として知られる環状ジペプチド(DKP)と苦味の関係に着目した研究を実施する。2019年度の研究において、後発酵茶の味パターンは製造に用いられる発酵の種類により類似すること、ならびに、碁石茶の酸味は好気発酵と嫌気発酵の両方において上昇すること、苦味は製造工程中に低下せず、最終的に僅かに上昇すること、渋味は好気発酵段階から徐々に減少することを明らかとした。 2020年度は、DKPの中でも食品中に豊富に含まれるPro含有DKP全20種類のLC-MS/MSによる一斉分析法を確立するとともに、碁石茶の各種味に関与する成分の解明を行った。その結果、碁石茶に含まれるDKP (測定対象 Pro含有DKP 20種類、その他DKP 22種類)の96.6%がPro含有DKPであることが判明した。また、味覚センサーを用いた分析の結果、碁石茶の酸味は好気発酵段階では没食子酸が、嫌気発酵段階以降では乳酸が関与していることが判明した。また、渋味の減少については、特にガレート型カテキン類が好気発酵段階に分解または重合することが原因であることが判明した。苦味の僅かな増加に関しては、好気発酵と嫌気発酵の両段階における苦味ペプチド、苦味アミノ酸、カテキン類分解物、カテキン類重合物の増加が関連していると推察された。2021年度においては、碁石茶中の苦味因子についてより詳しく追究する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度に予定していた研究内容はすべて実施済であり、加えて、苦味因子の解明については前倒しで着手済である。関連論文1報と学会発表1件の成果も残しており、研究の進捗は順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては、碁石茶中の苦味因子の解明に取り組む。特に、カテキン類重合物に着目した研究を実施し、機器分析を用いた苦味因子の構造解析を実施する。苦味因子の特定に至った後は、碁石茶以外の後発酵茶の苦味因子の解明にも研究範囲を拡大する。
|
Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により参加を予定していた国際学会が中止になったこと、ならびに国内学会もオンライン開催となったことから、旅費の支出がなかったことが原因である。今後、対面での学会開催が再開された場合には積極的に参加するとともに、実験計画に加えたカテキン類重合物の構造解析用の消耗品として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)