2019 Fiscal Year Research-status Report
外的ストレス要因による新規カビ毒産生菌の出現とその分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K05870
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
小林 直樹 麻布大学, 生命・環境科学部, 講師 (90447558)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ステリグマトシスチン / カビ毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
カビが産生するカビ毒は発がん性などを示し、ヒトの健康を脅かす自然毒の一つとして知られている。カビ毒は様々な食品および農作物を汚染しており、食品衛生上全世界的に問題となっている。カビ毒は一部の菌種によって産生され、その多くは熱帯域を好んで生息することが知られている。しかし近年の地球温暖化に伴いその生息域の拡大と農作物及び食品のカビ毒汚染の増大が懸念されている。今後日本においても汚染の拡大が懸念される。本研究においてはカビ毒のひとつステリグマトシスチンを対象に、地球温暖化のストレスによりカビ毒非産生菌種において眠っているカビ毒産生能が呼び起こされてカビ毒産生菌種となる可能性を検証するとともに、加保独の産生性を制御する因子の特定を行うことを目的とした。 今年度は(1)ステリグマトシスチン非産生菌種を様々な培養条件で培養し、ステリグマトシスチン産生が生じるかどうかを検証することと、(2)トランスクリプトーム解析のための代表菌種ゲノム配列の決定を目標に研究を進めた。後者については、まずこれまでに公開されているゲノム情報を精査した。その結果、本研究で対象とする菌種のトランスクリプトーム解析においてベースとすることが可能な菌種のゲノム配列情報として、Aspergillus versicolor CBS 583.65株の情報を見出すことができた。前者については非産生菌種の中からAspergillus tabacinus およびAspergillus venenatusの2菌種において複数の培養条件で培養し、ステリグマトシスチンの産生を調べたが産生に変化がみられる条件は見出すことができていない。引き続き条件を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は次の二つの内容を進めた。(1)ステリグマトシスチン非産生菌種を様々な培養条件で培養し、ステリグマトシスチン産生が生じるかどうかを検証(2)トランスクリプトーム解析のための代表菌種ゲノム配列の取得。まず、(2)については、既に公開ゲノムデータベースに登録されているゲノム情報を精査した。その結果、本研究で対象とする菌種のトランスクリプトーム解析においてベースとすることが可能なAspergillus versicolor CBS 583.65株のゲノム情報を見出すことができた。次年度以降に計画しているRNA-seqでは、本データを使用して行うことが可能である。(1)については、研究対象としてステリグマトシスチン非産生菌種として使用を予定していた保有株の一部について、保存菌株の復元が正常に進まず使用できなくなってしまった。そのため申請時に計画していた3菌種各3菌株を対象に行うことができなかった。候補菌種としていた菌種のうちAspergillus tabacinus およびAspergillus venenatusの2菌種において複数の培養条件で培養し、ステリグマトシスチンの産生を調べた。しかし現在までに産生に変化がみられる条件を見出すことはできていない。また、復元できなかった株の代替株を取得するため、新たにAspergillus section Versicolores の分離・同定を進め、研究対象となるステリグマトシスチン非産生菌種であるAspergillus austroafricaus、Aspergillus tabacinus、Aspergillus venenatus の取得を試みた。しかし、対象とする菌種の新規株は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きステリグマトシスチン非産生菌種を様々な培養条件で培養し、ステリグマトシスチン産生がみられる条件を検討する。産生条件が見いだされた場合には、ステリグマトシスチン産生性が示された培養条件と非産生培養条件での遺伝子発現をRNA-seq解析により比較する。また、ステリグマトシスチン産生菌種と非産生菌種の間での遺伝子発現の比較も行う。産生菌種としては代表菌種であるAspergillus versicolor とともに広く産生菌種として知られるAspergillus creber を用いる。また、非産生菌種としてAspergillus tabacinusおよびAspergillus venenatusを用いる。なお、2021年度に計画しているRNA-seq解析後のqPCRによる遺伝子発現の検証の際にはより多くの菌株を対象とすることが望ましいと考えられるため、引き続き新たなAspergillus section Versicolores の分離・同定を進める。
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Causes of Carryover |
申請時に供試株として計画していた株のうち、復元ができず使用がかなわなかった株が生じたため代替株の分離・同定を進めている。代替株が取得出来次第、今年度に予定していた実験を行う予定である。その結果も踏まえ、2020年度に計画していた研究を進める。以上のことから次年度の使用をお認めいただきたい。
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