2019 Fiscal Year Research-status Report
損傷大腸菌の検出に及ぼす培地内活性酸素の影響評価と有効な活性酸素消去剤の探索
Project/Area Number |
19K05873
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
亀谷 宏美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主任研究員 (20585955)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 損傷菌 / 活性酸素 / 電子スピン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
食中毒を減少させるためには、原因となった微生物を検出し、混入経路を特定することが重要だが、それらが不明な事例もある。その理由として、原因微生物が損傷状態で、既存の培地及び培養法では検出が難しいことが挙げられている。近年、培地中の活性酸素が微生物の生育を阻害しており、活性酸素消去剤の添加により菌の生育が向上することが報告された。そこで本研究では、食中毒原因微生物の大腸菌を対象として、①ESRスピントラップ法で培地内の活性酸素の種類を同定して定量し、②培地内活性酸素が損傷大腸菌の検出に及ぼす影響を評価する、という研究目標を達成することで、損傷大腸菌の検出率向上に有効な活性酸素消去剤を探索する。 本年度は、培地内活性酸素の解析と培養に適した活性酸素消去剤の探索を行った。EM9寒天培地(半合成培地)内の活性酸素をESRスピントラップ法で測定した結果、活性酸素を捉えることができたので、ESR測定条件の至適化を行い、明瞭なスペクトルを得た。また、大腸菌を培養したEM9培地では観測される活性酸素量が増加することが明らかになった。得られたESRスペクトルを解析したところ、EM9培地で観測された活性酸素はヒドロキシラジカルとスーパーオキシドラジカルであった。培地は種類によって成分組成が異なることから、大腸菌培養に用いられる複数の培地で実験を行ったところ、EM9培地と同様のスペクトルが得られた。さらに、チオ硫酸ナトリウムとピルビン酸ナトリウムを培地に添加して大腸菌を培養したところ、観測される活性酸素量は無添加培地より減少し、大腸菌検出率が向上する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
事前に行っていた予備実験の結果解析やESR測定条件の検討が想定以上に進展し、早期に活性酸素消去剤を添加した培地での大腸菌培養実験に取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、10種類程度の活性酸素消去剤を様々な濃度で加えた培地で、乾燥、加熱、pHなどの要因で損傷させた大腸菌を培養し、活性酸素の測定及び菌数のカウントを行う。さらに、得られた様々なデータ(培地内活性酸素の種類や量、活性酸素消去剤の効果、大腸菌の損傷の種類、培養した大腸菌の生菌数)を解析し、包括的に考察することで、損傷大腸菌の検出に及ぼす培地内活性酸素の影響について評価する。また、大腸菌の培養に使用した活性酸素消去剤の種類と濃度の評価から、損傷大腸菌の検出率を向上させる活性酸素消去剤を決定する。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりもESR測定条件検討と大腸菌培養準備の進捗が進み、少ない実験数で解析に必要なデータが得られたため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額を使用して、海外で行われる国際学会に参加し、情報収集と本研究の成果発表を行う予定である。
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