2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05878
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
斉藤 史恵 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00625254)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ワイン / 微生物汚染 |
Outline of Annual Research Achievements |
ワイン品質を保つうえで,微生物汚染は避けなければならない必須事項である。マスカット・ベーリーA(MBA)は日本ワインの主力ブドウ品種であるが微生物安定性の低さが指摘されている。しかし,酒質が弱いという説明のみで原因解明や改善策などは懸案事項のままとなっている。そこで本研究は,まず微生物汚染で生じる酢酸などのオフフレーバー(OF)が他品種のメルロー(MR)やカベルネ・ソーヴィニヨン(CS)ワインと異なるのか明らかにする。次に,微生物安定性に寄与するpHや抗菌活性成分について品種間差の検証を行う。抗菌活性成分については,ポリフェノール(PP)やタンニン類であると予想されるため,これら成分を分取精製して活性成分の同定と作用機構の解明を試みる。令和元年度は,2つの下記の項目を行った。 1.MBAの酒質評価 分析を行った市販ワイン(MBA 51本,MR 48本,CS 20本)のうち酢酸濃度0.6 g/L以上のワインはMBA,MRともに約40%でありMBAのみが高いわけではなかった。一方,CSは25%で低い傾向にあった。さらに,代表的な微生物汚染である産膜に由来する揮発性成分(アセトアルデヒド,アセタール,アセトイン)の定量にも着手した。 2.微生物安定性への寄与成分探索 ワインのpHは微生物安定性に大きく寄与するが,3品種間でpHに大きな差は見られず他の要因が考えられる。MBAはMRやCSに比べ,抗菌性を有するPPやタンニン含有量が低いことが知られているが,これら成分の産膜性酵母に対する効果はほとんど知られていない。そこで,産膜より産膜性酵母を採取分離し,微生物試験の立ち上げを行った。MBAとCSワインよりPPを分取して培地に添加し,産膜形成を比較する試験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.MBAの酒質評価について,分析本数を増やし品種間比較を行うまでに至った。現在のところ,酢酸についてはMBAワインのみが高い値を示すわけではなかったが,その他のOF(アセトアルデヒド,アセタール,アセトイン)についても分析することとした。アセトアルデヒドについては酵素法による定量の条件決定まで至ったが,アセタール,アセトインについてはGCによる定量条件決定にやや時間を要している。2.微生物安定性への寄与成分探索について,予想していたpHは関係がないことが示唆された。そこで,次に予測される抗菌活性成分のPPやタンニンに着目することとした。本項目を実施するために,産膜性酵母を用いた微生物試験の立ち上げ,ワインからのPP分取条件の検討を行った。抗菌活性試験法については,いくつか改善が必要ではあるものの大筋の条件決定まで至った。
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Strategy for Future Research Activity |
MBAの酒質評価について,引き続きOFの測定項目を増やし比較検討を行う。微生物安定性への寄与成分探索について,PPやタンニンに着目することとした。微生物試験の立ち上げまで至ったため,次の段階としてMBA,MR,CSのPPおよびタンニン量と産膜性酵母による産膜形成および抗菌活性との関係性について検討を行う。具体的には,ろ過滅菌処理した各品種のワインに産膜性酵母を接種して産膜形成の有無を確認する。また,ワインよりPPおよびタンニンを分取して培地に添加し,産膜性酵母を接種して産膜形成や酵母の増殖に影響を及ぼすか測定を行う。
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Research Products
(1 results)