2019 Fiscal Year Research-status Report
腸管免疫細胞による食物繊維由来多糖の認識機構の解明
Project/Area Number |
19K05879
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
北口 公司 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50508372)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 食物繊維 / ペクチン / 大腸炎 / マクロファージ / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
食物繊維の摂取が様々な炎症性疾患に対して保護的に働くことが示唆されている。これまでに我々は,水溶性食物繊維の一種であるペクチンを摂取することで,小腸パイエル板のCD11c陽性細胞の炎症応答を抑制し,全身性の炎症が緩和されることを明らかにした。さらに,その抗炎症作用には,ペクチンの側鎖が重要であることも見出している。一方,ペクチンが腸内で資化された結果生じる短鎖脂肪酸が血中に移行することで,腸管局所のみならず全身の炎症応答を調節できる可能性も示唆されている(プレバイオティクス効果)。しかしながら,ペクチン側鎖とプレバイオティクス作用との関係には不明な点が多い。そこで,側鎖含量の異なる2種類のペクチン(シトラス由来ペクチン,オレンジ由来ペクチン)を大腸炎モデルマウスに給餌し,大腸炎病態に及ぼす影響を調査した。 オレンジペクチンは,中性糖の割合がシトラスペクチンに比べて約3.5倍高かった。側鎖含量の低いシトラスペクチンと側鎖含量の高いオレンジペクチンを含有する飼料をマウスに給餌した後,TNBSおよびDSSで大腸炎を誘導した結果,オレンジペクチン含有飼料摂取群でのみ体重低下や大腸組織の傷害が有意に改善した。また,大腸における炎症性サイトカインIL-6産生量もオレンジペクチン含有飼料摂取群で有意に低下していた。さらに,オレンジペクチン摂取による大腸炎保護作用は,抗生剤投与により腸内細菌を除菌した場合でも維持されていた。以上の結果より,ペクチンの大腸炎保護効果にはペクチン側鎖含有量が重要であること,ならびにその作用機序としてプレバイオティクス作用とは異なる経路が関与している可能性が示唆された。これまでの我々の研究結果と併せて,ペクチンを認識し炎症応答を減弱させる免疫細胞が腸管に存在している可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. ペクチンの側鎖が腸内細菌非依存的に抗炎症作用を有することが判明した。この結果は,先行研究で発見したペクチンの側鎖を介した抗炎症作用が個体レベルにおいても充分に働いていることを示し,直接腸管のマクロファージなどの免疫細胞に作用している可能性も示唆している。今後のさらなる抗炎症活性構造の探索に重要な知見が得られた。 2. 細胞レベルでは,側鎖の化学構造よりもむしろ側鎖の量が炎症の抑制に重要であることが判明した。すなわち本研究で使用したシトラスとオレンジのペクチン側鎖に共通に含まれる多糖・オリゴ糖がマクロファージに作用している可能性が示唆された。細胞レベルでも個体レベルと同様にペクチン側鎖の重要性が明らかにできたため,この特性を利用して今後ペクチンの免疫細胞における認識機構の解析を進めることが可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から,ペクチンの側鎖が抗炎症活性に重要であり,シトラスやオレンジなどペクチンの側鎖に普遍的に含まれている多糖が関与している可能性が示唆された。ペクチン側鎖は,中性糖で構成された複雑な構造をとることが知られている。そこで今後は,様々な多糖分解酵素を作用させた側鎖中から抗炎症活性を示す多糖・オリゴ糖を探索し,ペクチンの抗炎症活性構造の同定を目指す。さらに,マクロファージ細胞には,ペクチンを認識し,炎症性シグナル伝達を調節する分子を発現している可能性が示唆されたため,マクロファージとペクチンの直接的な相互作用と炎症制御に関与するシグナル伝達経路を明らかにすることで,ペクチン認識受容体を探索・同定する。
|
Research Products
(3 results)