2019 Fiscal Year Research-status Report
視床下部及び甲状腺を標的としたビオチンのエネルギー代謝亢進作用と肥満改善への応用
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19K05883
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
曽根 英行 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (90398511)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビオチン / 肥満 / 甲状腺 / 自発性活動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、エネルギー代謝の中心臓器である甲状腺に着目し、ビオチンの体重増加抑制効果の作用点として、甲状腺濾胞細胞の細胞内シグナル伝達系について甲状腺代謝亢進系ホルモンの血中濃度と関連物質の遺伝子発現量を測定することで検討した。加えて、マウスの行動記録(動画)を解析し、自発性活動量に及ビオチンの効果についても併せて検討した。 実験動物には、C57BL/6Jマウス(雄、5週齢)を用い、脂肪由来カロリー比率65%高脂肪食で7週間飼育して明確な肥満マウスを作成した。その後、本マウスを高脂肪食(HF)群とHFビオチン群の2群に分け、7週間飼育した。自発的活動量は、ビオチン食飼育開始1週間後(初期)と4週間後(後期)、飼育環境の明期と暗期でそれぞれ測定した。臓器重量、血漿T3、T4、TSH、コルチゾール濃度、甲状腺におけるペルオキシダーゼ及びTSH受容体の遺伝子発現量は、実験飼育終了の7週間後に測定した。 結果、ビオチンは摂取初期から体重増加抑制効果を示し、その効果は実験終了まで持続された。肝臓、精巣周囲脂肪、腎周囲脂肪の脂肪量はビオチンにより有意な低値を示し、高脂肪食摂取下、ビオチンによる脂質代謝亢進とそれに起因した体重抑制効果が明らかにされた。一方、体重当たりの摂取カロリーは有意な増加を示し、ビオチンによるエネルギー消費亢進が示唆された。自発的活動量は、初期の明期で有意な増加を示し、ビオチンによる体重抑制効果の要因の一つと示唆された。しかし、後期では活動量は減少傾向にあり、ビオチンの作用機序は初期効果と持続的効果で異なることが示唆された。また、甲状腺では、ビオチンによるペルオキシダーゼ及びTSH受容体の遺伝子発現量の増加傾向が認められ、甲状腺機能亢進が推察されるものの、血漿ホルモン濃度には変化が認められず、これまでの結果を追試することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ビオチンによる高脂肪食誘導性肥満の抑制機構として、ビオチンによる代謝亢進作用に加え、新たに自発性活動量の増加を示唆する結果を得た。さらに、ビオチンによる体重増加抑制作用が、ビオチンの初期効果と持続的効果の2相性を示し、それぞれで作用機序の異なることを明らかにした。これらの点から本年度は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食誘導性肥満に対するビオチンの体重増加抑制作用の作用機序が、ビオチンの初期効果と持続的効果で異なることが示唆された。初期効果では、自発性活動量の増加に加え、甲状腺機能の亢進が示唆される。しかし、持続的効果では、想定していた甲状腺機能の亢進が認められず、綿密な追試が要求される。今後は、ラット甲状腺細胞由来細胞株(FRTL:Rat Thyroidea cell line)を使用し、甲状腺ホルモンに対するビオチンの作用機序を検討するとともに、db/dbマウスを使用して本年度と同様の解析を行うことで、ビオチンによる体重増加抑制作用におけるレプチンシグナルの関与の有無について検討することを予定している。
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