2021 Fiscal Year Research-status Report
視床下部及び甲状腺を標的としたビオチンのエネルギー代謝亢進作用と肥満改善への応用
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19K05883
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
曽根 英行 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (90398511)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビオチン / 肥満 / 甲状腺 / レプチンシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの結果、ビオチンは高脂肪食誘導性肥満に対する体重増加抑制作用を示し、その作用機序としてビオチンによる自発性活動量の増加とエネルギー代謝亢進、特に甲状腺機能の亢進が示唆された。 本年度は、ラット甲状腺濾胞細胞株(FRTL-5:Fischer Rat Thyroid cell line 5)を使用し、甲状腺ホルモン分泌系のセカンドメッセンジャーであるCa2+の細胞内濃度変化に対するビオチンの効果を検討した。FRTL-5細胞を96wellプレートに播種し、Ca2+の蛍光プローブFluo4-AMを取り込ませ、細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)測定に使用した。[Ca2+]iは、FRTL-5細胞を最終濃度1mU/mL TSHで刺激し、蛍光強度をマイクロプレートリーダー(Ex=495nm, Em=518nm, gain=55)で10秒間隔で測定した後、細胞数で補正して算定した。ビオチンの効果は、1mU/mL TSH+100μMビオチン添加での[Ca2+]i変化を測定することで検討した。次いで、db/dbマウスを使用し、ビオチンによる体重増加抑制作用におけるレプチンシグナルの関与の有無について検討した。 結果、FRTL-5における細胞内Ca2+濃度はビオチンによる明確な変化を認めなかった。db/dbマウスによる検討では、ビオチンによる体重増加量や摂食量、各臓器重量の抑制効果は認められなかった。以上の結果から、ビオチンは、体重増加抑制や脂質代謝亢進による肥満改善においてレプチンシグナル系の下流で作用することが示唆され、レプチンシグナルを介したエネルギー代謝亢進、特に甲状腺ホルモンの分泌促進が推察される。その作用機序として、Ca2+以外のセカンドメッセンジャーであるcAMPへの効果を想定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、高脂肪食誘導性肥満に対するビオチンの体重増加抑制作用として、ビオチンがレプチンシグナルの下流で作用することを明らかにした。しかし、ビオチンの作用機序として想定していた細胞内Ca2+濃度変化には効果的に作用しなかったことから、別経路での検討が必要となった。そのため、本年度の進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食誘導性肥満に対する体重増加抑制作用におけるビオチンの作用点がレプチンシグナルの下流にあることが明らかにされ、その作用機序が細胞内cAMP濃度の増強にあることが予測される。今後は、昨年度に引き続きFRTL-5を使用し、細胞内cAMP濃度変化に対するビオチンの効果を詳細に検討するとともに、レプチンシグナルの標的臓器のひとつである白色脂肪の細胞株であるマウス線維芽細胞3T3-L1細胞を用い、脂肪酸合成系及び燃焼系におけるビオチンの効果について、関連するタンパク質の遺伝子発現量を測定することで検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度にコロナ禍の影響で研究が実施できず本研究の1年間の延長を余儀なくされ、2022年度が本研究の最終年度となる為
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