2022 Fiscal Year Research-status Report
視床下部及び甲状腺を標的としたビオチンのエネルギー代謝亢進作用と肥満改善への応用
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19K05883
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
曽根 英行 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (90398511)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ビオチン / 甲状腺濾胞細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビオチンによる高脂肪食誘導性肥満に対する体重増加抑制の作用機序については、昨年度までの本実験結果により、ビオチンが自発性活動量の増加とエネルギー代謝亢進、特に甲状腺機能を亢進することを明らかにした。さらに、db/dbマウス及びラット甲状腺濾胞細胞株(FRTL-5:Fischer Rat Thyroid cell line 5)を用いた検討により、ビオチンがレプチンシグナル系の下流で作用し、レプチンシグナルを介したエネルギー代謝亢進、特に甲状腺ホルモンの分泌を促進することを示唆している。しかし、甲状腺ホルモン分泌系のセカンドメッセンジャーの一つであるCa2+の細胞内濃度変化に対するビオチンの効果は認められず、その作用機序としてはcAMPへの効果が強く想定された。 そこで本年度は、昨年度に引き続きFRTL-5を使用し、細胞内cAMP濃度変化に対するビオチンの効果を詳細に検討するとともに、cAMPによって発現が制御される甲状腺ホルモン分泌系関連タンパク質の遺伝子発現量を測定することで、ビオチンの作用機序の解明を目指した。その結果、ビオチンは細胞内cAMP濃度の経時変化において、刺激直後から細胞内cAMP濃度を有意に上昇させることが明らかにされた。しかし、甲状腺ホルモン関連タンパク質であるTSH-R:甲状腺刺激ホルモン受容体、TG:サイログロブリン、NIS : Na+/I-シンポーター、TPO:サイロペルオキシダーゼの遺伝子発現量については、ビオチンによる変化は認められなかった。 甲状腺濾胞細胞において、cAMPはTG、TPOの遺伝子発現の他、ヨードの流入過程、甲状腺ホルモン複合体の濾胞腔からの取り込み、甲状腺ホルモンの放出を制御している。遺伝子発現量に変化が認められなかったことから、ビオチンは濾胞細胞内外への甲状腺ホルモンの移動に関与することが推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高脂肪食誘導性肥満に対するビオチンの体重増加抑制作用の作用機序として、甲状腺濾胞細胞におけるTSH刺激によるcAMP濃度の上昇を増強することを明らかにした。さらに、その作用点が甲状腺ホルモン複合体の濾胞細胞への取り込みもしくは甲状腺ホルモンの放出にあることが推察された。そのため、本年度の進捗状況はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食誘導性肥満に対する体重増加抑制作用におけるビオチンの作用点がレプチンシグナルの下流にあり、その作用機序の一つして、甲状腺での濾胞細胞内cAMP濃度の増強を明らかにした。しかし、レプチンシグナルによる脂肪燃焼系には、交感神経系を介したカテコールアミンの効果が有力である。今後は、ビオチンによるカテコールアミン分泌系への効果を検討すると共に、レプチンシグナルの標的臓器のひとつである白色脂肪の細胞株であるマウス線維芽細胞3T3-L1細胞を用い、脂肪酸燃焼系におけるビオチンの効果について、関連するタンパク質の遺伝子発現量を測定することで検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍や学内運営等の影響により動物実験を実施することができなかったため、次年度での使用額が生じた。 動物実験により、ビオチンによる高脂肪食誘導性肥満に対する体重増加抑制と甲状腺ホルモン分泌の増強について再確認すると共に、レプチンシグナル系での新たな作用機序として、カテコールアミン分泌と白色脂肪での脂肪酸燃焼系におけるビオチンの効果について検討することを計画している。
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