2023 Fiscal Year Annual Research Report
視床下部及び甲状腺を標的としたビオチンのエネルギー代謝亢進作用と肥満改善への応用
Project/Area Number |
19K05883
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
曽根 英行 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (90398511)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ビオチン / 肥満 / レプチンシグナル / 自発性活動量 / 甲状腺 / アドレナリン |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食誘導性肥満マウスを作製し、ビオチンによる肥満予防・改善効果について検討した。結果、高脂肪食摂食下、薬理量のビオチンは肝臓、精巣周囲脂肪、腎周囲脂肪の脂肪量を低下させ、摂食に因らない体重抑制効果を示すことが明らかにされた。オープンフィールドテストによる自発性行動量の解析から、ビオチンが肥満による活動量の低下を正常レベルまで回復させることを示し、これらの効果がビオチンによるエネルギー代謝亢進に起因することを明らかにした。しかし、レプチン受容体に異常のある過食性肥満2型糖尿病マウス(db/db)の検討ではビオチンによる体重抑制効果は一切認められず、ビオチンはレプチンシグナルの下流でその作用を増強することが示唆された。レプチンシグナルによるエネルギー代謝調節では、交感神経系と甲状腺ホルモン分泌が重要な役割を果たす。高脂肪食誘導性マウスでは、ビオチンによる血中甲状腺ホルモン(T4)及びアドレナリン濃度の上昇が認められ、甲状腺濾胞と副腎髄質がビオチンの有力な標的部位として示唆された。ラット甲状腺濾胞細胞株による検討では、ビオチンは細胞内Ca2+濃度には影響しないもののTSH刺激による細胞内cAMP濃度の上昇を増強することが示された。 以上、ビオチンは高脂肪食誘導性肥満に対する体重抑制効果を有し、甲状腺濾胞細胞でのcAMP濃度を増強し、甲状腺ホルモン分泌を亢進する。レプチンシグナルによる脂肪燃焼系では交感神経や副腎皮質から分泌されるカテコールアミンの効果が重要となるが、ビオチンによるアドレナリン分泌増強が認められたことから、ビオチンは甲状腺濾胞と副腎髄質においてcAMP産生を促進することでレプチンシグナルを増強し、エネルギー代謝を亢進することが推察される。
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