2020 Fiscal Year Research-status Report
食品中におけるピロリジジンアルカロイド類の新規分析法の開発と食品汚染実態の解明
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19K05891
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
仲谷 正 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主幹研究員 (90300996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ピロリジジンアルカロイド / 茶 / 蜂蜜 / 植物 / 栄養補助食品 / LC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に確立した分析法、すなわち抽出法にQuEChERs法を採用し、精製法には陽イオン交換固層抽出カラムを用いた方法により蜂蜜中のピロリジジンアルカロイド(PAs)27種を対象に汚染実態調査を始めたところ、回収率のばらつきが見られたため、調査を一旦中断し、分析法の再検討を行った。再検討の結果、0.05M硫酸を用いて抽出した試料抽出液を、陽イオン交換固層抽出カラムで精製後、得られ精製液をさらに陰イオン交換固層抽出カラムへの通液による再精製を行う方法が、予備試験の結果から良好な結果が得られるものと期待できたため、本分析法を用い実態調査を行った。調査と併行して行った添加回収試験(n=12)の結果は、1種のPAs(jacopine窒素酸化物)を除き、26種のPAsに対し回収率76~116%、併行精度3~15%と良好であった。 実態調査は国内産蜂蜜32試料、外国産蜂蜜31試料を対象に実施した。定量下限(0.01~0.02 ng/g)以上でいずれかのPAsが検出された蜂蜜の割合は、国内産および外国産とも96%以上であった。またいずれの産地の蜂蜜中でも最も検出率が高かったPAsは互いにジアステレオマー化合物であるintermedine(国内産66%, 外国産71%)およびlycopsamine(国内産78%, 外国産81%)であった。国内産と外国産の蜂蜜において、検出されたPAsの種類には一定の特色が見られ、外国産蜂蜜ではechimidineが61%と高いのに対し、国内産では13%と低かった。また国内産ではpetasitenineおよびneopetasitenineがそれぞれ44%であったのに対し、外国産蜂蜜からは検出されなかった。これらの違いは、蜜源となる植物が地域により異なることが予想されるが、本研究で得られる結果を総合的に解析し、その原因について明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に未達成であった分析法の確立については、2020年度にほぼ達成できた。現在、蜂蜜および茶(ハーブティーや健康増進を目的とした茶)試料を対象とした実態調査と併行し分析法の妥当性評価を進めている。なお本分析法は文献等で報告されていない新たな手法であり、より精製度の高い試料溶液の調製が可能であることから、マトリクス効果の軽減や機器への汚れを最小限に抑えることができるものと期待できる。 実態調査の進捗状況は、蜂蜜では約60試料について分析を行い、検出されたPAsの含有量について精査を行っている段階である。茶試料については、約60試料を対象に現在分析進行中である。植物試料については、文献等でPAs含有が報告されている野菜および可食可能な野草、または可食される可能性がある野草を中心に採集を行い、分析を行っている段階である。植物試料では購入可能な標準品を参照し、27種のPAsを対象としたターゲット分析を行うと同時に、同位体組成比やマスフラグメントのパターンを指標とした標準品が市場に存在しないPAsを対象とするノンターゲット分析も実施している。 各種分析は進めているが、昨今の社会状況および当所独特の各種事情により、解析作業が全体的に停滞気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査結果を基に、調査試料中に含有するPAsの濃度分布を調べ、正規分布に近いものである場合や、諸外国との調査結果と比べ対等な調査試料数である場合は、これらを理由に予定していた調査試料数を減らす場合もある。 当該年度は、これまで機器分析した結果を取りまとめ、補完データを獲得しつつ、本研究の4本の柱となる1) 蜂蜜、茶および植物由来の栄養補助食品中のPAs新規分析法をLC-MS/MSを用いて確立する 2) 未知PAsを含めた植物中のPAs含有量、分布パターンの調査 3) PAsに特徴的なマススペクトル上のフラグメントイオンを活用した半定量法の確立 4) 食品摂取に由来するPAs暴露量の評価と汚染経路の推定、等を実行する。 1)はほぼ達成めどはつき、4)についいてもターゲット分析を行ってきたPAsについては、機器分析した結果を取りまとめ次第、達成できると期待しているが、2), 3)については、ノンターゲット解析作業に多くの時間を要しているため、当所で使用しているLC-MS/MSに付随している類縁体化合物を推定するソフト等を活用して効率的な解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、分析法の開発、調査試料の購入、調査試料の分析に用いる各種カラムやLC-MS/MSの分析の際に使用する分離カラムの購入を主とした助成金執行状況となっている。しかしながら、データ解析作業が進んでいないため、研究結果の総合的解析作業で使用するパーソナルコンピューター、統計解析ソフトの購入には至らなかった。またコロナ状況下において情報法収集等を目的とした遠隔地での学会等への参加ができなかったため、予定していた予算執行額を満たせなかった。 次年度においても調査は継続的に続くため各種試薬や分析機器消耗品購入費は断続的に、生じる。また当該年度購入予定であったパーソナルコンピューター、統計解析ソフトを購入予定であるため、次年度は、昨年度執行できなかった助成金に当初請求した助成金を加えた額を本研究で執行する。
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