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2019 Fiscal Year Research-status Report

リン脂質(レシチン)の改変・加工に用いる新規耐熱性ホスホリパーゼの性質と応用

Research Project

Project/Area Number 19K05898
Research InstitutionKyoto Prefectural University

Principal Investigator

辻本 善之  京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (20315930)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2023-03-31
Keywordsレシチン / リン脂質 / ホスホリパーゼA / 機能性レシチン / 機能性リン脂質
Outline of Annual Research Achievements

ホスホリパーゼA(PLA)は、リン脂質(レシチン)に作用してリゾリン脂質(リゾレシチン)を生成する酵素であり、乳化性に優れたリゾレシチン製造やレシチンの機能改変などに広く使用されている。現在広く利用されているブタ膵臓PLAは感染症や宗教上の問題があるが、これを凌ぐ耐熱性に優れた代替酵素は無かった。そこで、我々は新規PLAを産生する好熱性細菌を得るためにスクリーニングを行った。その結果、レシチン分解性好熱性細菌として新規好熱性細菌 Caenibacillus caldisaponilyticus B157T株を単離した。本菌株が細胞外に産生する耐熱性ホスホリパーゼは、sn-1位に高い選択性を有するPLA1であった。一般的にPLAは細胞膜成分であるリン脂質を分解するため、組換え体の大腸菌での大量発現は困難である。しかし、我々は、本酵素をプロ型(不活性型)として大腸菌で発現させた後、B157T株由来や市販のプロテアーゼによるプロ配列除去により、成熟型(高活性型)酵素を得ることに成功した。
酵素化学的解析の結果、本酵素B157TPLAは耐熱性に優れ、40-70℃で高い活性を示すが、80℃で5分間の処理で失活するので、酵素反応後に除去しやすいことが分かった。豚膵臓PLAは、95℃で、30分間程度の加熱処理をするだけでは、その活性は十分には失活しないと報告されているため、用途に制限がある(安全性に問題がある)のに対し、本酵素は、酵素除去がしやすいという利点があることが明らかになった。また、B157TPLAは、pH 4-11の幅広い範囲で安定であり、pH 6-11で高い活性を示した。さらに、本酵素を用いて、卵黄レシチンや大豆レシチンの脂肪酸側鎖を、有機溶媒を使用せずにオリーブ油やココナッツ油由来の脂肪酸側鎖に交換することに成功した。今後、環境負荷がない機能性レシチンの合成法の最適化を行う予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本酵素の大腸菌組換え酵素の大量調製法の確立を行った。N末端側に細胞外分泌のためのシグナル配列とC末端側に酵素活性を阻害するプロ配列を持つため、まずシグナル配列を除いたプロ型(不活性型)PLAを、pET系ベクターと大腸菌Rosetta DE3株を用いて発現させた。その形質転換体の無細胞抽出液を、熱処理、核酸・膜画分の除去などを行い、電気泳動的にほぼ単一の組換えプロ型PLA標品を得た。組換えプロ型PLAの精製標品に対し、proteinase Kを用いて、C末端側プロ配列を除去し、疎水クロマトグラフィーを用いて、精製組換え成熟型PLAを得ることに成功した
本酵素を用いて、諸性質を明らかにした。B157TPLAは、40-70℃で高い活性を示し、70℃で30分間処理してもほぼ活性を維持し、80℃で5分の処理で失活した。一方、豚膵臓PLAは、95℃で、30分程度の加熱処理をするだけでは、その活性は十分には失活しないためと報告されているため、用途に制限がある(安全性に問題がある)。本酵素は、リン脂質加工などの後の除去が比較的容易であることが明らかとなった。また、pH 4-11の幅広い範囲で安定であり、pH 6-11で高い活性を示した。さらに、予備実験的ではあるが、現在までに、本酵素を用いて、卵黄レシチンや大豆レシチンの脂肪酸側鎖を、有機溶媒を使用せずに脱水条件下で酵素反応を行うことによって、オリーブ油やココナッツ油由来の脂肪酸側鎖に交換することに成功しており、その反応条件の最適化などを行う。これまでの有機化学的手法に比べて、環境に優しく、消費者にも安心・安全で高付加価値な機能性レシチンを簡便に製造できる。

Strategy for Future Research Activity

今後、B157TPLAの産業利用における優位性を明らかにするために、酵素化学的・反応速度論的解析をさらに進めるとともに、リゾリン脂質(リゾレシチン)や機能性リン脂質(機能性レシチン)の高効率生産法の確立や、得られた各リン脂質誘導体の諸性質を明らかにする予定である。
さらに、本酵素と市販酵素(ブタ膵臓や麹由来のPLA)との機能比較を行い、本酵素の優位性を明らかにする。熱やpHの安定性や依存性、基質特異性、位置選択性など、酵素化学的特徴を詳細に比較検討する予定である。また、本酵素を用いて、リゾリン脂質(リゾレシチン)や機能性リン脂質(機能性レシチン)を、有機溶媒を用いずに合成することに成功しているが、それらの高効率生産方法を確立する。リゾリン脂質の脂肪酸側鎖は、水溶液中では非酵素的に自発的にグリセロール骨格への結合部位が変化(異性化)することが知られている。例えば、2-アシルリゾリン脂質は、一部1-アシルリゾリン脂質となり、平衡化する。従って、sn-1位に特異的なPLA1がリン脂質に作用して、2-アシルリゾリン脂質を生成しても、それが1-アシルリゾリン脂質に非酵素的に変化し、 PLA1によって、その1-アシルリゾリン脂質をさらに分解してしまう。従って、酵素反応をうまくコントロールし、リゾリン脂質の高効率で生産する条件を検討する必要がある。また、卵黄・大豆由来のレシチンのsn-1位の脂肪酸側鎖を、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの機能性脂肪酸に変換する高効率的条件を検討し、最適化を行う。さらに、本酵素を用いて調製したリゾリン脂質(リゾレシチン)や機能性リン脂質(機能性レシチン)の乳化性、臨界ミセル濃度、酸化能などの諸性質を明らかにすることにより、本酵素の有用性を明らかにする。

Causes of Carryover

当初希望していた機器の付属機器が高く、購入できなかったため、予定を変更して微量の振盪タイプの恒温槽を2台購入した。また、試薬や分析用試薬が想定より安価であったため、予算が少し残った。しかし、酵素の基質特異性などを詳細に検討するには、比較的高価な人工基質なども購入して研究を行う必要がある。さらに、予定していた学会発表がコロナ禍の影響で中止となり、出張予定がなくなった。

  • Research Products

    (2 results)

All 2020 2019

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Caenibacillus2019

    • Author(s)
      Tsujimoto Yoshiyuki、Watanabe Kunihiko
    • Journal Title

      Bergey's Manual of Systematics of Archaea and Bacteria

      Volume: ? Pages: 1~5

    • DOI

      doi.org/10.1002/9781118960608.gbm01623

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] リン脂質改質を目指した好熱性細菌B157T株由来活性型ホスホリパーゼA1組換え体の調製と性質決定2020

    • Author(s)
      ○森 千波、田中 秀典、齋藤 遼、辻本 善之、渡部 邦彦
    • Organizer
      日本農芸化学会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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