2023 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of Tropomyosin receptor kinase B (TrkB) by ethanol
Project/Area Number |
19K05904
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
松井 敦聡 岐阜医療科学大学, 薬学部, 准教授 (60309698)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エタノール / BDNF / TrkB / 抗うつ作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿った通りの進捗とはならず、遅れている状況である。酒類に含まれるエタノールは、最古の中枢神経系薬物とも言えるが、作用機序についてはいま だ不明な点がある。本研究では、エタノールの作用機序に関わる新たな分子として脳由来神経栄養因子(BDNF)受容体であるTrkBに着眼し、その制御機構と機能を明らかにすることを目的とする。TrkBは神経成熟と機能発現に必須の分子であり、様々な疾患との関わりも注目されているため、エタノールによる TrkBの活性化は、適量の飲酒がうつ病やアルツハイマー病のリスクを軽減するという、酒類の健康増進効果の科学的なエビデンスとなる可能性がある。研究代表者が異動した所属機関で新設中であった動物実験施設の稼働開始が遅れ、動物実験の開始が遅れた。その後コロナ禍での研究資材の入手困難、リモート講義対応による研究時間への影響を受け、研究が遅延していたため、補助事業期間延長の申請を行った。研究機関全体を通じて、マウスへのエタノール投与により、前頭前皮質および海馬において、投与量2.5 kg/kgをピークとして用量依存的にBDNF受容体TrkBのリン酸化の増強と、細胞内シグナル伝達系である Akt-GSK-3β-mTOR-p70S6K経路の活性化が観察され、シナプス後部グルタミン酸受容体GluA1のリン酸化の増強も観察された。同経路はケタミンの即効性抗うつ作用に関連しているとされ、本研究においても、強制水泳試験において、マウスへのエタノール 2.5 g/kg投与により即時性の抗うつ作用が示されたが、ケタミンとは異なり 24時間後には抗うつ作用は消失した。ラット胎児大脳皮質由来初代培養神経細胞においては、エタノールにTrkB活性化作用は見られず、間接的な機序が考えられた。
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