2019 Fiscal Year Research-status Report
食品成分が腸管粘膜恒常性IgA誘導に及ぼす影響の解析
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19K05906
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
後藤 真生 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (30302590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 祐子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, ユニット長 (40353940)
若木 学 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主任研究員 (50710878)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食品成分 / 腸管IgA / 抗原特異性 / 恒常性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】食品成分や腸内細菌叢などの腸管内容物に刺激され誘導・産生される腸管secretory immunoglobulin A (sIgA)は、抗原で刺激されたT細胞に誘導され抗原特異性が高いT-dependent (TD)-sIgAと、マクロファージなどに恒常的に誘導され抗原特異性が低いT-independent (TI)-sIgA(恒常性IgA)に分けられる。しかし、両者とも多くが腸内常在菌に結合し、分子としても同一であるため、それぞれを区別して挙動を解析することは難しい。課題担当者らは、T細胞レセプター遺伝子導入(TCRTg)マウスを用いることにより、未感作状態で産生されるsIgAはほとんどがTI-sIgAであるのに対し、導入されたレセプター特異抗原で経口感作することでTD-sIgAが誘導されることを利用し、TI-sIgA、TD-sIgAの産生に摂取食品が及ぼす影響をそれぞれ評価することを可能にした。 【方法】粗飼料で飼育したTCRTgマウスを2群に分け、コントロール群では粗飼料摂取を継続するのに対し、試験群には精製飼料を摂取させ、試験食摂取前後の糞便中TI-sIgA量を測定し、その後、両群を特異抗原で経口感作し、誘導された糞便中TD-sIgAの抗体価を測定した。 【結果】同腹・同ケージ個体間でもTI-sIgA量に大きな差が認められた。特に、群分け時に高いTI-sIgAを示す個体は精製飼料の摂取によりTI-sIgA量が大きく減少したが、低TI-sIgA個体では大きな減少は観察されなかった。一方、TD-sIgA抗体価は、群分け時および試験飼料摂取後TI-sIgAの多寡や摂取飼料による差はほとんど見られなかった。これらの結果から、恒常性IgAの少なくとも一部は粗飼料中の成分に誘導・産生されること、及び、一方TD-sIgAの産生誘導は食品の影響を受けにくいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、初年度早々に精製飼料の摂食により減少する恒常性IgA産生に関わる組織部位を特定するとともに、その誘導機序の解明に取り組むこととしていた。しかしながら、研究の過程において、精製飼料摂取に伴う糞便中IgA減少は個体によりその感受性が大きく異なることが明らかとなった。この個体差を考慮に入れずに当初計画を推進することは時間的、研究資源的に非効率となることが判明したため、初年度は当初計画に着手するに先立ち、高感受性個体を事前に選別できる指標となる因子を特定する研究を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の結果、特定の週齢における糞便中恒常的IgA量で精製飼料への感受性が規定されることを明らかとするとともに、高感受性個体を高精度で選別できる恒常的IgAの閾値を定めることができた。その値に基づき、精製飼料がTD-IgAの産生に及ぼす影響について高感受性群・低感受性群それぞれで解析した結果、TD-IgAは高感受性・低感受性のいずれに群においてもその産生は精製飼料の影響をほとんど受けないことが示唆された。今年度以降はこれらの結果に基づき、高感受性群・低感受性群それぞれについて、本来予定されていた計画の推進に加え、これらの個体差を生じる要因についても解析を進める予定である。大きな個体差を除去することが可能となったことで、研究の加速化が期待されるため、全体計画として遅延はないと見込んでいる。
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Causes of Carryover |
今年度は高感受性個体を高精度で選別できる恒常的IgAの閾値を定めるためのIgA測定試験に集中し、今年度行う予定としていた各種試験類を次年度以降に行うこととなったため。今年度以降は高感受性個体について精製飼料の摂食で減少する恒常性IgAが産生される組織部位を特定し、その誘導機序の解明に取り組むとともに、高感受性個体と低感受性個体の差異についても同様の検討を行う予定である。
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Research Products
(2 results)