2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05907
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
宮内 栄治 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (60634706)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 食物繊維 / 多発性硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(MS)は遺伝的要因が大きく寄与する中枢神経系炎症疾患であるが、腸内細菌を始めとする環境因子が発症や重篤化に多大な影響を与えることが明らかになってきた。本研究では、食餌由来成分による腸内細菌制御を介した治療法確率に向けた基盤の構築を構築する。昨年度までに、無繊維食を与えたマウスでは腸管内Akkermansiaや短鎖脂肪酸が減少し、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の感受性た高まることを確認した。一方、無繊維食投与マウスによるEAE感受性増加にはAkkermansiaや短鎖脂肪酸以外の因子が寄与している可能性が示された。そこで今年度は、EAE感受性増加に寄与する他の食餌由来成分や腸内代謝産物を探索するとともに、短鎖脂肪酸の関与についても引き続き検討を行った。まず、無繊維食投与マウスで減少した酢酸のEAE感受性への影響を検討した。マウスに酢酸付加セルロースを投与し小腸・大腸の酢酸濃度を増加させることができたが、それによるEAE症状の緩和は見られなかった。次に、無繊維食で含有量が増加しているグルコースのEAEへの影響を検討した。その結果、グルコースの付加によりEAEの症状が悪化した。一方、無繊維食投与で見られた免疫系の変化についてはグルコース付加のみでは確認できず、やはり他の因子の関与が示唆された。最後に、無繊維食投与マウスの腸管および血清中代謝産物を解析した。その結果、いくつかの代謝産物が無繊維投与マウスの腸管と血清中の両方で増加していた。また、変動が見られた代謝産物をマウスに投与したところ、自己応答性免疫応答が増加し、EAE症状が悪化した。以上の結果から、食物繊維は短鎖脂肪酸以外の代謝産物も変動させ、それがEAEに影響することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MS患者の腸内細菌叢の特徴として知られているAkkermansiaの増加や短鎖脂肪酸の減少をマウスで再現することができ、それらのマウスではEAE感受性が高いことを確認した。さらに、実際にはこれらの菌や代謝産物以外の因子が中枢神経系炎症の悪化に寄与していることを見出すことができた。また、昨年度予定していた高グルコースのEAEへの影響についてもグルコース付加試験に加えストレプトゾトシン投与試験も実施し、興味深い結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、食事により変動する代謝産物の網羅的解析から、EAE感受性に影響する代謝産物候補をいくつか見出した。その一つについては実際にEAE感受性への影響が認められたため、今後はその作用機序などを明らかにする。また、他の候補についてもEAE感受性への影響を確認するとともに、影響が認められたものについては同じく作用機序の解析を行う。 ストレプトゾトシン投与マウスのEAE感受性については当初の予想とは異なる結果が得られたため、これについても作用機序の解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
高血糖が中枢神経系炎症を制御する機序について、RNA-seqなどで解析を行う予定であった。しかし今年度の実験結果から、単純に高血糖が中枢神経系の炎症促進に加担しているのではなく、他因子の寄与が示唆された。そこで、中枢神経系炎症制御に寄与する因子の作用機序については次年度に実施する。
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