2020 Fiscal Year Research-status Report

Reevaluation of brown rice diet by the chemical analysis of functional ingredients in high-hydrostatistic pressure processed rice

Research Project

Project/Area Number	19K05911
Research Institution	Shinshu University
Principal Investigator	藤田智之信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (10238579)
Project Period (FY)	2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords	高静水圧 / マルターゼ阻害活性
Outline of Annual Research Achievements	玄米食における種々の健康機能効果が報告されており、代表的な成分としてγ-オリザノールやフェルラ酸等の効果が知られている。しかしながら、活性発現に係わる成分については未解明な点が多い。筆者は糠層中の成分を胚乳部に移行させた高圧加工米を開発し、高圧加工米摂取によるヒト介入試験において血糖値の改善効果等が認められた。高圧加工米中のγ-オリザノール量は通常米と同等であり、その病態改善効果を示す物質は未同定である。そこで、筆者は米糠に含まれる生理活性成分を単離・同定すれば、米に含まれる新規な機能性成分が発見できるものと推察し、二糖類分解酵素の一つであるマルターゼ阻害活性を指標に活性成分を単離することとした。米糠のメタノール抽出物を調製し、抽出物に含まれるマルターゼ阻害活性成分の検索を行った。米糠４kg（平成30年度長野県産コシヒカリ）をメタノール 20Lに室温で３日間浸漬後、吸引濾過して抽出液を得た。これを減圧濃縮後、凍結乾燥して米糠粗抽出物とした。米糠粗抽出物を水とトルエン、次いで酢酸エチルで液-液分配抽出し、トルエン層、酢酸エチル層、水層を得た。活性が認められた酢酸エチル層を各種カラムクロマトグラフィーで分離し、活性画分を得た。この活性画分をHPLCで分離し、３種の化合物を単離した。いずれもスクロースに２分子のケイ皮酸誘導体がエステル結合したショ糖エステルであると同定した。これらの化合物のマルターゼ阻害活性は初めての報告である。次に、活性が認められたブタノール層についても成分検索を行い、活性成分の単離・同定を行っている。これらの化合物の高圧加工米中の含有量を定量して通常米との成分量の差異を評価し、高圧加工米摂取による健康保持効果を検証する。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 二糖類分解酵素の一つであるマルターゼ阻害活性を指標として、米糠メタノール抽出物に含まれる活性成分を分離した。米糠４kg（平成30年度長野県産コシヒカリ）をメタノール　20Lに室温で３日間浸漬後、吸引濾過して抽出液を得た。これを減圧濃縮後、凍結乾燥して米糠粗抽出物とした。米糠粗抽出物を水とトルエン、次いで酢酸エチルで液-液分配抽出し、トルエン層、酢酸エチル層、水層を得た。各抽出液をマルターゼ阻害活性試験に供した。基質には150 mM マルトース溶液を用いた。粗酵素液はラット小腸アセトンパウダー１ｇを0.01 M リン酸緩衝液10 mL で撹拌抽出し、遠心分離して得られた上清を粗酵素液として用いた。グルコース定量はラボアッセイTMグルコースを用いた。阻害活性が認められたブタノール層を各種カラムクロマトグラフィーで分画した。活性を指標に分画を進め、得られた活性画分をHPLCにより分取し、酢酸エチル層から単離したスクロースに２分子のケイ皮酸誘導体（フェルラ酸またはシナピン酸）がエステル結合した３種のスクロースエステル化合物以外に、新たに新規化合物と予想されるマルトースのフェルラ酸エステルを単離した。フェルラ酸の結合位置は未決定であり、今後二次元ＮＭＲ等を用いて、構造を決定する予定である。また、これらの化合物の高圧加工米中の含有量を定量したところ、通常米よりも高含量含まれていることを確認した。
Strategy for Future Research Activity	これまでにマルターゼ阻害活性を指標として、米糠メタノール抽出物の活性画分である酢酸エチル層から３種の化合物を単離した。構造解析の結果、いずれもスクロースに２分子のケイ皮酸誘導体（フェルラ酸またはシナピン酸）がエステル結合したショ糖エステルであると同定した。しかしながら、これら３種の化合物の高圧加工米中の含有量は通常米と同程度であった。次に活性の高かったブタノール層の分離においては、３種の化合物を含む画分以外にもマルターゼ阻害活性が認められた。分画を進めたところ、マルトースにフェルラ酸が２分子結合した化合物を単離した。マルトースにフェルラ酸が２分子結合した化合物の単離例はなく、今後二次元ＮＭＲ等を活用して、化学構造を明らかにする予定である。また、ブタノール層の他の画分にも活性が認められていることから、これらの活性画分についても成分を分離し、化合物の単離、構造解析を進める予定である。
Causes of Carryover	前年度の予算執行については予定どおりであったものの、他の助成金の執行を優先したため残額を翌年度分として計上した。前年度未使用額については物品費として使用する予定である。