2020 Fiscal Year Research-status Report
低タンパク質栄養状態の肝臓で増加する翻訳調節因子を介した脂質蓄積機構の解析
Project/Area Number |
19K05916
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
鈴木 由香 (豊島由香) お茶の水女子大学, ヒューマンライフイノベーション研究所, 特任准教授 (70516070)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タンパク質 / 翻訳 / 4E-BP1 / eIF4G / 肝臓 / 中性脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪肝は、過食や肥満などの過栄養状態だけでなく、栄養素の摂取不足による低栄養状態でも発症する。我々は、摂取するタンパク質量の不足によって起こる低栄養状態(低タンパク質栄養状態)に着目し、低タンパク質栄養状態で起こる脂肪肝の発症に肝臓における翻訳抑制因子4E-BP1量の増加が必要であることを見出した。さらに、4E-BP1と拮抗的に翻訳を制御する翻訳開始因子eIF4G量も肝臓で増加することを見出した。 そこで本研究では、低タンパク質栄養状態に応答して増加する肝臓4E-BP1とeIF4Gが、糖・脂質代謝調節因子の翻訳を選択的に調節して肝臓に脂質を蓄積させるのではないかと考え、その機構の解明を目指す。 令和2年度は、低タンパク質栄養状態に応答して起こる肝臓eIF4Gの増加を人為的に抑えるための実験系を確立しようと試みた。まず、5種類のラットeIF4Gに対するshRNAを発現するプラスミドを作製した。そして、それらのプラスミドをラット筋芽細胞L6の細胞内に遺伝子導入した際に eIF4Gがノックダウンされるか検討した。その結果、5種類のうち3種類のshRNAを発現するプラスミドの遺伝子導入によってL6細胞内のeIF4G量が減少し、eIF4Gがノックダウンされたことが分かった。 来年度は、これらのeIF4Gのノックダウンが可能なshRNA配列をプラスミドからウイルスベクターへ組み換えてラットeIF4Gに対するshRNAを発現するアデノウイルスを作製し、低タンパク質食を給餌したラットの肝eIF4G量の増加を抑えた際の肝脂質蓄積量の変化の解析を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗が当初の計画通りよりやや遅れている理由として、研究代表者の所属機関の異動がある。異動の前後すぐの実験遂行は通常でも困難であるが、今年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあったため、進捗の遅れに拍車をかけた。 ただ、新たな実験系の確立をするための第一歩として、ラットでeIF4GをノックダウンするためのラットeIF4Gに対するshRNA配列を決定できたことは、次年度につながる成果であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている分を取り戻しつつ、当初の計画通りに進める予定である。 令和3年度は、ラットeIF4Gに対するshRNAを発現する組み換えアディウイルスの作製および精製を行い、ラット肝臓や単離した肝細胞でeIF4Gをノックダウンすることが可能か検討する。次に、作製・精製した組み換えアデノウイルスを用いて、低タンパク質栄養状態のラットの肝eIF4G量の増加を抑えた際に肝中性脂肪量がどのように変化するかを検討する。
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