2021 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌と代謝物の性差の違いが疾患に与える影響についての研究
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19K05923
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中西 裕美子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (10614274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 代謝物 / 性差 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度までに、コホート研究のヒト腸内細菌叢データと代謝物データを取得し、ヒトにおける腸内細菌叢と代謝物の性差について調べた。本研究では、2013年から開始した、健常者群、肥満群、耐糖能異常(IGT)群の被験者300名の「生活習慣病における腸内細菌の役割について」の検体からデータ取得と解析を行っている。本研究で着目している腸内細菌由来の代謝物であり動脈硬化を誘発するTrimethylamine N-oxide(TMAO)とその関連代謝物であるCholine、L-carnitine、Trimethylamine(TMA)を解析した結果、TMAOとその関連代謝物について、健常者群、肥満群、IGT群で比較した結果、血漿中のCholineが健常者群と比較しIGT群で有意に増加していたが、その他のTMAO関連代謝物はIGT群で高い傾向にあるものの、有意差はなかった。さらに、性差の違いについて比較したところ、女性で血漿中のCholineが健常者群と比較しIGT群で有意に増加していたが、男性では有意差は見られなかった。血漿中のCholineとL-carnitineは3群ともに女性で有意に低いという特徴がみられた。糞便中でもCholineとL-carnitineは3群ともに有意差はなかったが女性で低い傾向にあった。TMAやTMAOは動脈硬化を促進するが、その前駆体であるCholineは、アセチルコリン、リン脂質、メチル供与体ベタインの前駆体としても機能することから生体にとって必要な栄養素である。腸内細菌の代謝により糞便中、血中のCholineやL-carnitineが変化している可能性も考えられるため、今後は、腸内細菌叢とコリン関連代謝物との相関解析を行い、関連性を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度中に産休、育休を取得したため、今年度は時間のかかる動物試験を行う事ができなかったので、すでにサンプルを取得しているヒトサンプルから分析と解析を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、腸内細菌叢とコリン関連代謝物との相関解析を行い関連性を調べる。また、代謝物と腸内細菌叢の相関解析を行う事によりヒト及びマウスのTMAOやCholineの代謝に関連する腸内細菌を特定する。TMAOと関連する腸内細菌を動脈硬化が誘発されるApoE-/-マウスへ投与を行う事により、動脈硬化の促進について評価する。また、CholineやL-carnitineと関連する腸内細菌は健康増進に繋がる可能性があるため、これらの菌も単離して機能性を調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度に産休、育休を取得し、研究を一時中断したため、研究の1年延長を申請し、次年度に経費を一部繰り越したため。
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