2022 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌と代謝物の性差の違いが疾患に与える影響についての研究
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19K05923
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中西 裕美子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (10614274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 代謝物 / 腸内細菌 / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前の研究の結果からタウロコール酸などの胆汁酸がマウスで性差がみられたため、網羅的に胆汁酸を計測する方法を構築した。LCMS-8040を用いて、カラムはACQUITY UPLC BEH C18を使用し移動相A液(0.01%ギ酸)、B液(0.01%ギ酸/アセトニトリル)をグラジエント溶出し代謝物の分離を行い、MRMモードで測定を行う系を構築した。このシステムを使用し、胆汁酸を28種類計測することが可能となった。 この計測法を用いて、C57BL/6系統、12週齢の無菌マウスと異なる2つの施設のSPFマウスのオスとメスの肝臓と糞便の胆汁酸を計測した。その結果、マウスの肝臓と糞便ではほぼすべての検出された胆汁酸がメスにおいて高い結果だった。無菌マウスのメスにおいて胆汁酸濃度が高いことから、胆汁酸産生は生理的にメスの方が高いことがわかる。胆汁酸は小腸へ分泌されたのち腸内細菌により代謝を受け、二次胆汁酸を産生する。また、腸内細菌はタウリンやグリシンが抱合した一次胆汁酸を分解し脱抱合を行う。一次/二次胆汁酸の比、及び、抱合/脱抱合の比を計算したところ、抱合/脱抱合の比は総胆汁酸量の結果と同じ傾向だった。一次/二次胆汁酸の比では、糞便中では総胆汁酸量の結果と同様であったが、肝臓中では性別で差は見られなかった。これは小腸にて再吸収される胆汁酸は一次胆汁酸の割合が多く、二次胆汁酸は主に大腸の腸内細菌により産生されるため、肝臓と糞便中では異なる結果となったと考えられる。メスで胆汁酸量が多く観察されたのは、女性ではエストロゲンの作用によりコレステロールや胆汁酸産生が制御されることは報告されているため、性差が観察されたと考えられる。しかし、糞便中の抱合/脱抱合の比ではSPF-2のメスではばらつきが大きく有意な差は見られなかったことから、腸内細菌の影響で脱抱合される胆汁酸量が変化したためと考えられた。
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