2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on exposure estimation of inorganic nanoparticles contained in / adhered to food
Project/Area Number |
19K05924
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 美成 国立医薬品食品衛生研究所, 食品部, 室長 (40469987)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 銀ナノ粒子 / 食品 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノマテリアルの産業利用増加に伴い,食品由来の暴露が懸念されている.生体内で溶解しうる金属ナノ粒子は,イオン状態と粒子状態で毒性が異なるため,両者を分けて分析する必要がある.測定イオンの積分時間を10ミリ秒以下に設定した単一粒子-誘導結合プラズマ質量分析法 (sp-ICP-MS) は,二つの形態を分別測定できるため強力な分析方法である.食品由来のナノ粒子の暴露は重要な課題であるにもかかわらず,固体試料からナノ粒子を抽出する方法は確立されていない.sp-ICP-MS法の食品試料への適用性を,魚介試料中の銀ナノ粒子 (Ag NPs)を分析することで検討した.魚肉ソーセージを試験試料として用いて,異なる原理の前処理方法(超音波, 酵素分解, アルカリ処理, 界面活性剤等) を検討した.魚肉ソーセージからのAg NPs の抽出は,水酸化テトラメチルアンモニウム (TMAH) を用いたアルカリ処理とドデシル硫酸ナトリウム (SDS) を用いた可溶化の組合せで達成することが出来た. 粒径60 nmのAg NP標準溶液を試験試料に50 ng Ag L^-1の濃度でスパイクして添加回収試験を行ったところ,開発した前処理法は他の処理法よりも粒径 (97.7±3.8%), 粒子数濃度 (77.1±17.4%),粒子質量濃度 (72.0±24.3%) で良い回収率を示した.さらに,限外ろ過を行うことでイオン状態のAgを取除く工程を追加し食品試料中のAg NPを分析した. 粒径 14~50 nm のAg NPsが牡蠣から検出され,粒子数濃度は3.3×10^5~1.8×10^8 particle/gであった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
導入したナノ粒子解析システムは,イオンの積分時間が10ミリ秒未満にすると,満足な解析ができないことが明らかになった.しかしながら,既存のクロマト解析システムによる解析結果を元に,個々のピークに対して粒径の情報を得るためのワークシートを構成して単一粒子分析フローを確立することが出来た. 食品中からナノ粒子を抽出するための前処理方法を確立することが出来た.また,二枚貝を分析対象とすることで,食品からAg NPsを検出することに成功した.以上の点から,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は感度の高いAgを対象にした分析を進めたが,産業利用の多い二酸化チタンナノ粒子へのsp-ICP-MS分析の適用も検討したい. しかしながら,sp-ICPMS法によるナノ粒子の粒径に関する情報は,Ag NPであれば100%Agである必要が,TiO2であれば100% TiO2で構成されているとの仮定がある.そのため,環境中あるいは生物体内での反応により生成・変化しナノ粒子に関する粒径は不確実な情報となる.そのため,モノリスカラムを用いたHPLCにより異なる原理によって粒径の情報を得て,sp-ICPMSによる情報と比較する必要がある.つまり,HPLCとsp-ICPMSのハイフネーション分析について検討を行う.
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Causes of Carryover |
導入したナノ粒子解析ソフトウエアが当初希望していた性能を満たしていなかった。そのため、追加のオプションを購入することを見合わせた。 来年度以降は、ナノ粒子を分離するためのカラムや、HPLC-ICP-MS分析に使用するための各種消耗品に当てる予定である。
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