2021 Fiscal Year Research-status Report
The effect of flavonoid from the mucosal side in intestinal organoids
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19K05925
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小酒井 貴晴 山形大学, 地域教育文化学部・理工学研究科, 教授 (70391480)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸管上皮 / フラボノイド / 短絡電流法 / 腸管オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管のグルコース吸収の大部分を担っているNa+/グルコース共輸送体1(SGLT1)の輸送活性に及ぼすフラボノイドの影響は依然不明なままである。そこで、本申請課題は、1)粘膜側と血液側の仕切り(極性)が維持されている正常細胞のオルガノイド培養系により、生体の生理条件に類似したグルコース 吸収評価系を確立させ、2)各種フラボノイドによるグルコース吸収阻害活性の差異とその作用機序を、Ussing-chamber法(従来法)と比較・検討する。 昨年度までの研究成果から、1)成マウスの小腸組織から幹細胞マーカーであるLGR5陽性細胞が約2倍多く含まれる単離条件(EDTA処理を3―4回施した後に単離される上皮細胞群)を見いだした。この単離細胞フラクションはオルガノイド形成に適した細胞群であることから、オルガノイドを効率よく形成させて実験に供することにした。2)マウス空腸部における起電性グルコース輸送をプロアントシアニジンの管腔側添加が用量依存的に抑制することを明らかにしていたので、血液側への添加による効果を検討した。 その結果、1)オルガノイド形成を試みたが、実験実施回数が少なく、再現性が確保できる実験結果を得られなかった。2)プロアントシアニジンを血液側へ添加して、30分間前培養した後にグルコースを管腔側へ添加すると、グルコース誘導性の起電的Na+能動輸送を抑制した。この結果から、アグリコンでのフラボノイドによるグルコース輸送に及ぼす影響は、管腔側および血液側からも影響し、その作用機序は複雑であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
幹細胞マーカーを指標に、正常な単層上皮膜を形成するオルガノイド(球状細胞塊;内側が粘膜側、外側が血液側) を2倍程度に増加させる実験条件を見いだし、SGLT1輸送に及ぼす評価系の構築を目指した。しかし、コロナ感染症による大学での研究活動の規制が、断続的に実施され、実験実施例数が極めて少なくなり、再現性を確保できるほどの実験が実施できなかった。オルガノイド形成には培地交換や添加物などの数日おきのケアなどが重要、かつ、その培養期間も1ヶ月間と長いため、どうしても同条件による培養条件を維持できなかった。一方、Ussing-chamberによる実験系は、1日に2―3例の実験を実施できるため、血液側への効果を確認できた。アグリコンでのフラボノイドによるグルコース輸送に及ぼす影響は、管腔側および血液側からも影響し、その作用機序は複雑であることが示唆された。フラボノイドアグリコンは細胞膜を透過しやすく、血液側へ添加したアグリコンが細胞内へ吸収された、細胞内で抱合体化した後に、血液側または管腔側へ分泌される。また、異なるフラボノイドによる異なる効果も考えられるため、管腔側フラボノイドのグルコース吸収への影響は配糖体とアグリコンでの実験結果を比較しながら、配糖体の分解性を加味しながら慎重に考察することが必要であろう。
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Strategy for Future Research Activity |
最終3年次にすべて終了できなかったので、4年目の研究期間を延長する。ただ、今年度の活動もコロナ感染症の影響を受けることが予想されるため、2)のUssing-chamberによる実験系は優先的に実施して、管腔側からの配糖体およびアグリコンの各種フラボノイドの影響を比較検討する。その結果を踏まえて、SGLT-1を介した輸送を促進するものと抑制するものを厳選して、1)オルガノイドでの試験評価を実施することで、本研究の新規知見を確実なものとする。
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Causes of Carryover |
最終3年次にすべて終了できなかったので、4年目の研究期間を延長する。今年度の活動もコロナ感染症の影響を受けることが予想されるが、昨年度までよりは、研究活動や学会活動が活発になることが予想されている。Ussing実験系により実験成果を得つつ、秋や冬の学会発表(分子生物学会、農芸化学会、畜産学会など)への参加や出張を考えている。また、パートワーカーの雇用も復帰したり、サンプル輸送などの研究交流が促進されるので、謝金としての予算執行も滞ることなく、実施する予定である。
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