2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト臓器モデルを用いた分子細胞生物学的手法による機能性食品成分の探索と機能解明
Project/Area Number |
19K05928
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 裕 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30835377)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 小腸オルガノイド / Caco-2細胞 / ゲノム編集 / CYP誘導 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ヒトiPS細胞から分化させた小腸オルガノイドおよびオルガノイドから作製した単層上皮細胞を用いて,これらの細胞が従来のモデルよりも生理的なヒトバイオロジーを解明するためのツールになることを示した。 従来のヒト小腸上皮モデルとして,株化細胞であるCaco-2細胞が一般的に広く使用されている。しかし,Caco-2細胞ではヒト小腸の生理機能を十分に反映しない現象が多く指摘されている。本研究では,生体内における小腸上皮では重要であるがCaco-2細胞では低いとされる生理機能のうち,薬物代謝酵素の誘導,グルコーストランスポーターを介した糖取り込み,食事由来の脂質を全身に輸送するカイロミクロン分泌に着目した。検討の結果,これらはCaco-2細胞とは異なりオルガノイド由来単層上皮細胞で正常に機能することを見出した。 さらに,CRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子改変オルガノイドを簡便に作製するための実験技術に関する検討を行った。一過的な遺伝子導入効率を上げるための検討に時間を要したが,目的遺伝子のノックアウトをmRNAレベル,タンパク質レベルで確認できた。本方法の樹立は,オルガノイドにおける遺伝子機能解析の促進につながることが期待できる。 また,東京大学の創薬機構が保有する化合物ライブラリを用いて細胞死を誘導する化合物のスクリーニングを行った。その結果,Caco-2細胞で細胞死を誘導し,小腸オルガノイドでは細胞死を誘導しない化合物の中には,分子標的の抗がん剤が多く含まれていた。この結果は,Caco-2細胞は正常な小腸上皮というよりは,がん細胞としての性質を強く示すことを示唆している。そのため,薬剤の副作用として知られる小腸毒性の予測や,副作用の少ない抗がん剤の開発といった応用研究において,小腸オルガノイドやオルガノイド由来単層上皮細胞は優れたモデルとなり得ると考えられた。
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