2020 Fiscal Year Research-status Report
メタゲノム解析による食品衛生指標菌の選抜と汚染源推定技術への応用
Project/Area Number |
19K05939
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Research Institution | Saitama Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
富永 達矢 埼玉県産業技術総合センター, 食品・バイオ技術担当_北部, 専門研究員 (80580539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食品衛生 / 腐敗指標 / メタゲノム解析 / 細菌フローラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腐敗食品の指標となる細菌種の選抜を目的としている。これまでの研究で、腐敗した食肉で共通して見出される細菌(Yersinia属、Pseudomonas属)を特定した。しかし、食肉以外の食品ではメタゲノム解析を行っていないため、見出された細菌属が食肉に特異的であるか判断できなかった。そこで、本年度は、洋菓子を対象にメタゲノム解析を行い、腐敗指標となる細菌属の特定を試みた。 4種類の市販洋菓子(A, B, C, D)を37℃にて24時間保温し、腐敗させた。腐敗洋菓子を10 g採取し、90 mLの滅菌済み生理食塩水と混合し、30秒間ストマッカーで処理して均質化した。この溶液からDNAを抽出して、次世代シーケンサー(NGS)を用いた16S rDNA解析の試料とした。 NGS解析で得られたリード数は、洋菓子A(26,370リード)、洋菓子B(25,674リード)、洋菓子C(29,446リード)、洋菓子D(19,683リード)であった。各々の腐敗洋菓子の細菌フローラ(占有率3 %以上)は以下のとおりであった。洋菓子AはBacillus属(46 %)、Pantoea属(40 %)、Leuconostoc属(6 %)、Staphylococcus属(5 %)。洋菓子BはBacillus属(87 %)、Pantoea属(13 %)。洋菓子CはBacillus属(81 %)、Leuconostoc属(9 %)、Gluconobacter属(4 %)、Pantoea属(3 %)。洋菓子DはPantoea属(95 %)。すべての洋菓子でPantoea属が検出され、腐敗指標となり得ると考えられた。腐敗食肉で共通して検出されたYersinia属は、洋菓子Aにおいて1リード検出されただけであり、Pseudomonas属は洋菓子Dで116リード、洋菓子Cで1リード検出されたにすぎなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回の細菌フローラの解析によって、腐敗した洋菓子および食肉に特異的な細菌属を特定できた。しかし、これらの菌を特異的に検出する手法が確立されていないため、汚染源推定技術へつながらない。したがって、研究の進捗がやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
腐敗食肉や腐敗洋菓子に特異的な細菌を検出する手法を開発する。感度も特異度も高いアッセイ系を構築する。汚染源推定技術へ展開するため、定量的な分析が可能となるよう検討を進める。腐敗食品の分離株を対象に系を構築し、実際の食品で実用性を検証する。
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Causes of Carryover |
感染症の蔓延により、試薬製造企業で生産計画の大幅な見直しがあり、必要な試薬の調達が難しかったため、次年度使用額が生じた。現在、小規模ながらも製造ラインが再稼働しており、今年度は通常どおり試薬を入手可能との話があり、研究計画を遂行する予定である。
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