2021 Fiscal Year Research-status Report
メタゲノム解析による食品衛生指標菌の選抜と汚染源推定技術への応用
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19K05939
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Research Institution | Saitama Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
富永 達矢 埼玉県産業技術総合センター, 食品・バイオ技術担当_北部, 専門研究員 (80580539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食品衛生 / 腐敗指標 / メタゲノム解析 / 細菌フローラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腐敗食品の指標となる細菌種の選抜と検出を目的としている。昨年度までの研究で、Yersinia属やPseudomonas属の菌が腐敗した食肉の指標となり得る菌であり、Pantoea属が腐敗した洋菓子の指標となり得る菌であることが分かった。本年度は、洋菓子の腐敗を迅速に検知するための試験紙を構築し、イムノクロマトアッセイによって腐敗の程度を評価できるか試すこととした。 Pantoea属に特異的な抗体を用いた試験紙とPantoea属をふくむ大腸菌群を広域に認識する抗体を用いた試験紙を構築し、イムノクロマトアッセイを行った。前者では、4種類中1種類の洋菓子でしか陽性を示さなかったが、後者では、すべての洋菓子で陽性となった。そこで、以降の試験では、大腸菌群を広域に認識する抗体を用いた試験紙を用いることとした。 初発菌数が1E0~1E3 cfu/mLの大腸菌群株を培養し、イムノクロマトアッセイで陽性を示すまでの培養時間を調べた。初発菌数が5.8×1E3 cfu/mLのとき、培養せずに陽性となった。初発菌数が5.8×1E2 cfu/mLのとき、3時間培養すると陽性になった。初発菌数が5.8×10 cfu/mLのとき、6時間培養する陽性になった。初発菌数が5.8 cfu/mLのとき、9時間培養すると陽性になった。以上の結果から、初発菌数の濃度が高いほど、より短い培養時間でイムノクロマトアッセイが陽性になることが分かった。 洋菓子を3、6、9時間培養し、イムノクロマトアッセイの結果から培養前の洋菓子の腐敗度を推測できるか調べた。その結果、3時間で陽性=1E5 cfu/g、6時間で陽性=1E3 cfu/g、 9時間で陽性=1E2 cfu/g、9時間で陰性=<1E2 cfu/gと推測した場合、正答率87%(27/31)で培養前の洋菓子の腐敗度を予測できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究で、洋菓子や食肉の腐敗指標を選抜した。本年度は、洋菓子の腐敗を検出するための試験紙を構築した。また、イムノクロマトアッセイで陽性を示すまでの培養時間から、腐敗の程度を定量化することに成功した。この定量化手法は、様々な食品へ応用できると考えられる。したがって、研究の進捗は順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
食肉の腐敗指標を検出するための試験紙の構築を試みる。また、食肉や洋菓子以外で、細菌汚染が問題となる食品を対象として、次世代シーケンサーを用いた細菌構成叢の解析を進め、腐敗指標となる細菌種を選抜する。選抜された菌を検出するアッセイ系を構築し、実際の食品で腐敗を検知できるか検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大により、サプライチェーンが乱れ、研究に必要な消耗品で購入できないものが生じたため、次年度使用額が生じた。次年度は代替品を購入して研究を進める。
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