2022 Fiscal Year Research-status Report
メタゲノム解析による食品衛生指標菌の選抜と汚染源推定技術への応用
Project/Area Number |
19K05939
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
富永 達矢 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (80580539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 食品衛生 / 腐敗指標 / メタゲノム解析 / 細菌フローラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腐敗食品の指標となる細菌種の選抜とその簡易検出システムの構築を目的としている。昨年度までの研究で、腐敗した食肉や洋菓子の指標菌を選抜した。そして、イムノクロマトアッセイによって洋菓子の腐敗度を評価できることが分かった。本年度は、細菌全般を検出するため、ポリリジンを用いた試験紙を構築し、それを用いたアッセイ(polylysine-based lateral flow assay: PLFA)の検出感度やスペクトルを調べた。
腐敗した食品から検出される事例が多い腸内細菌科属の細菌、乳酸菌、Pseudomonas属の細菌、 Bacillus属の細菌等34属88種90株すべてをPLFAによって検出できた。≧6 log10 (cfu/test)の菌濃度のときに陽性となった。合計36種類の新鮮な食品(レタス、千切りキャベツ、細切りダイコン、もやし、食肉、洋菓子)とそれに相当する36種類の腐敗した食品を3h、6h、9h培養し、各々何時間培養したときにPLFAで検出できるか調べた。すべてのサンプルにおいて、腐敗食品は新鮮食品よりも短い培養時間でPLFA陽性となった。
そして、①0hで陽性の場合:>8.1 log10(cfu/g)、②3hで陽性の場合:>6.8 log10(cfu/g)、③6hで陽性の場合:>5.1 log10(cfu/g)、④9hで陽性の場合:>4.4 log10(cfu/g)、⑤9hでも陰性の場合:<4.4log10(cfu/g)と推測した場合、正答率96%(69/72)の確率で培養前の食品の細菌汚染の程度を予測できることが分かった。PLFA陽性となるまでの時間とlog10食品のinitial菌数(cfu/g)の関連を調べたところ、回帰直線の信頼係数は0.9888を示した。前処理をふくめたPLFAの試験時間は約30分であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度までの研究で、食肉や洋菓子の腐敗指標を選抜した。また、洋菓子の腐敗度を評価可能な試験紙を構築し、細菌全般を試験紙ベースで検出する手法を開発した。しかし、サラダ類をはじめとするReady-to-eat foods(消費者が購入後に加熱調理をしないで食べる食品)の腐敗指標の選抜や腐敗度を評価するシステムの構築には着手できていない。したがって、研究の進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
サラダ類をはじめとするReady-to-eat foodsを対象として、次世代シーケンサーを用いた細菌構成叢の解析を進め、腐敗の指標となり得る細菌種を選抜する。選抜された菌を検出する試験紙を作製し、これらの食品の腐敗度を評価可能なアッセイ系の構築を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大により、サプライチェーンが乱れ、研究に必要な消耗品で購入できないものが生じたため、次年度使用額が生じた。次年度は代替品を購入して研究を進める。また、転職に伴い、本年度は研究環境の整備に追われたが、研究を進めることが可能な環境が整ったため、次年度は計画通りに研究を遂行する。
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