2020 Fiscal Year Research-status Report
General and Specific Nuclear Gene Regulation by Plastid Signals
Project/Area Number |
19K05942
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
華岡 光正 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (30508122)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | プラスチドシグナル / GUN1 / 葉緑体 / エピジェネティック制御 / 概日時計 / 光合成 / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が正常に生育するためには、核と葉緑体間における双方向の情報伝達が重要な役割を果たしているが、特に葉緑体内の状態を核に伝えるプラスチドシグナルについては不明な点が多く残されている。本研究では、葉緑体における中心制御因子と考えられているGUN1の分子機能や、下流の核遺伝子発現調節メカニズムを明らかにすることで、プラスチドシグナル伝達の普遍性と多様性をより明確に示すことを目的としている。 今年度はまず、プラスチドシグナルと概日時計の関係を検討するため、強光ストレスにより葉緑体の光合成機能にダメージを与えた際の表現型解析を行った。シロイヌナズナの野生株(C24)と概日時計変異株(toc1-1)を用いて、連続明条件・明暗条件・明暗+強光ストレス条件下での生育を調べたところ、概日時計の変異株ではストレス条件下での白化が早まり、成長が大きな遅延することが示された。このことから、葉緑体の光合成機能と核の概日時計は両者間のシグナル伝達経路を介して密接に関連していることが示唆された。一方、プラスチドシグナルによる標的プロモーターのメチル化制御に関する解析も進めた。一般に、カロテノイド合成経路の阻害剤であるノルフルラゾンを処理した際には、野生株ではCAB3やRBCSなどの核コード光合成遺伝子群の発現がプラスチドシグナルによって抑制されるが、gun1変異株ではこの転写抑制が見られない。培地の移し替えによる独自の実験系でこの薬剤処理を試したところ、期待される遺伝子発現制御パターンの検出条件を確立することができた。この実験系によって得られたノルフルラゾン処理・未処理の野生株・gun1変異株から抽出したゲノムDNAを断片化し、バイサルファイト法によって処理の後、次世代シーケンサーによるメチル化部位の特定を進めている。現在、生データが得られた段階であり、配列情報の解析を進めているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までの研究により、プラスチドシグナルによる核遺伝子発現制御の多様性については一定の知見を得ることができた。薬剤処理の実験系も最適化を済ませ、DNAメチル化制御の解析まで実施することができた。ヒストン修飾やChIP解析など、タンパク質レベルの実験に向けた予備検討も進行しており、次年度に向けて一定の進捗が得られたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的・研究計画にしたがって次年度の研究を進める。現状で大きな問題はないが、個々のテーマをうまく並行させながら効率的・効果的に研究を進め、得られた成果の論文発表・学会発表を目指す。詳細な研究方針や内容については今後の実験結果を踏まえながら微調整するが、総じて当初の計画を上回る成果を挙げられるよう尽力する。
|
Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルスの影響により年度前半の研究がほぼ停止したため、消耗品の使用が限定的であった。また、予定されていた国内・海外の学会が中止、またはオンライン開催となり旅費の支出が不要となったこともあり、次年度使用額が生じている。次年度は例年通りのアクティビティで研究が進められると期待しており、また、研究補助者への人件費(謝金)も引き続き支出予定であるため、相応額の使用を計画している。
|
Research Products
(4 results)