2021 Fiscal Year Research-status Report
General and Specific Nuclear Gene Regulation by Plastid Signals
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19K05942
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
華岡 光正 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (30508122)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラスチドシグナル / 葉緑体 / エピジェネティック制御 / GUN1 / ヒストン修飾 / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が正常に生育するためには、核と葉緑体間における双方向の情報伝達が重要な役割を果たしているが、特に葉緑体内の状態を核に伝えるプラスチドシグナルについては不明な点が多く残されている。本研究では、葉緑体における中心制御因子と考えられているGUN1の分子機能や、下流の核遺伝子発現調節メカニズムを明らかにすることで、プラスチドシグナル伝達の普遍性と多様性をより明確に示すことを目的としている。 今年度は、下流遺伝子発現のエピジェネティックな制御の実態を明らかにするため、プラスチドシグナルによる標的プロモーターのメチル化制御、ならびにヒストン修飾に関する解析を進めた。昨年度までに確立した、ノルフルラゾン処理によってプラスチドシグナルを安定に発生させる実験系を用いて、代表的な標的遺伝子であるCAB3やRBCSなど核コード光合成遺伝子群のプロモーター領域のDNAメチル化状態をバイサルファイトシーケンス法により調べた。当初進めていた次世代シーケンサーによる網羅的解析では、調査した複数の遺伝子領域の全てにおいて過剰にメチル化されていると思われる結果が得られたため、個別の遺伝子プロモーターについて、制限酵素による断片確認やクローニングによる配列解析を進めているところである。そのため、より精緻な実験が必要と考えられ、補助事業期間の延長を申請し、承認を受けた。一方で、ヒストン修飾に関する解析についても、プラスチドシグナルによりヒストンアセチル化の状態が変化する結果を得ることができたが、個別のアミノ酸残基レベル・プロモーターレベルの最終データは得られておらず、これらも引き続き検討を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度までの研究により、プラスチドシグナルによる核遺伝子発現制御の多様性については一定の知見を得ることができた。薬剤処理の実験系は現在も安定に運用できており、プラスチドシグナルの下流で一部のヒストン修飾が起こっていることを示せたことから、エピジェネティック制御の一端は明らかにできた。一方で、DNAメチル化制御の詳細なデータは得られておらず、残された他の実験と共に次年度に期間延長して研究を継続することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
プラスチドシグナルによる下流遺伝子発現のエピジェネティックな制御について、これまでの研究により一定の手がかりは得られているため、ヒストン修飾・DNAメチル化制御の両方において、最後の仕上げとなるデータの取得に努め、得られた成果の論文発表・学会発表を目指す。詳細な研究方針や内容については今後の実験結果を踏まえながら微調整するが、総じて当初の計画を上回る成果を挙げられるよう尽力する。
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Causes of Carryover |
プラスチドシグナルによるエピジェネティック制御の研究が最後まで進まなかったため、消耗品の使用が限定的であった。また、予定されていた国内・海外の学会が中止、またはオンライン開催となり旅費の支出が不要となったこともあり、次年度使用額が生じている。次年度は残された研究の推進と成果発表を予定通り進められると期待しており、また、研究補助者への人件費(謝金)も引き続き支出予定であるため、相応額の使用を計画している。
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Research Products
(3 results)