2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K05943
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下遠野 明恵 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (70647544)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 転写因子 / 複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
幹細胞の特性である優れた自己複製能と多分化能は、転写因子を構成要素にもつ遺伝子発現制御系が緻密にコントロールされていることに起因する。これまでに幹細胞の維持に関わる個々の因子の同定と機能解析は進められているが、これらが幹細胞ニッチでどのような分子ネットワークを介して協調的に機能しているかに関する知見は少ない。そこで本研究では、植物多能性幹細胞の機能維持に関わる因子群の特定と、それらの動態を分子レベルで明らかにすることを目指している。 申請者はこれまでに、根の幹細胞形成に重要な役割を担っている転写因子(stem-cell niche associated protein complex: SNAP)を特定しており、本研究ではこの制御機構を司る新たな構成因子の同定とその作用機序の解明を行うことを目的としている。 令和元年度で行なった予備試験の結果を受けて、令和二年度では、複合体の構成因子を特定するために、タグ無しSNAPタンパク質誘導型のコンストラクトを用いてトランスクリプトーム解析を実施し、その解析で特定したターゲット因子に対する転写活性能を測定した。その上で、前年度に行なったタグ有りSNAPタンパク質の転写活性を測定し、活性化に必要なタンパク構造が保持されていることを確認した。さらにこのコンストラクトをSNAP機能欠損株に導入した相補性試験も行ない、表現型の回復に必要な機能がin vivo でも保持されていることも確認した。このような一連の予備試験の結果を受けて最終的に至適なタグを決定し、形質転換体の作出を行なった。さらにファーウエスタン法の条件検討とMS解析を行うためのタンパク質複合体の精製条件の検討を行なった。コロナ禍で予定外の長期間にわたって研究活動に対する制限があったものの、最終年度の前に、MS解析に必要な試料の準備とタンパク質精製の予備実験を終えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染拡大防止に伴う二度の緊急事態宣言を受けて、所属機関では研究室への入室制限・活動制限などの措置が取られたため、年間を通して時間的にかなり制限された研究活動ではあった。そのような状況下であったにも関わらず、トランスクリプトーム解析を実施し、SNAPタンパク質の下流イベントの特定と相補試験を実施し、最終年度に実施予定のMS解析をする上での予備実験を終えることができたため、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和三年度は最終年度に当たるため、予定通りにMS解析によって活性型複合体の構成因子を同定する。さらに得られた候補因子との相互作用をY2HやBiFCで確かめるとともに、これらの候補因子をCo-transfectionして転写活性を測定し評価を行うことで、最終的にSNAPタンパク質活性型複合体の構成因子を同定する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大防止の観点から、当初予定していた解析・技術補佐員の新規雇用・国際学会への参加などが困難になってしまったことが一因である。本年度はラボを新たに立ち上げるために実験機材や消耗品の購入が必要となることと、MSの解析費などが追加で必要となるため、これらの経費に充てて使用する予定である。
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Research Products
(5 results)