2019 Fiscal Year Research-status Report
TORC2シグナルの活性化に寄与する細胞膜脂質の作用機序の解析
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19K05949
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 亘 京都大学, 農学研究科, 特定助教 (60724292)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TORC2 / yeast / シグナル伝達 / エルゴステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
TOR(Target Of Rapamycin)は、真核生物に保存されたタンパク質リン酸化酵素である。TORは機能的に異なる2つの複合体(TOR複合体1:TORC1、TOR複合体2:TORC2)を形成することで機能を発揮し、細胞成長や代謝などの細胞増殖の根幹をなすシグナル伝達経路を構成する。モデル生物である出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて、TORC2はAGCキナーゼファミリーに属するYpk1/2およびPkc1を基質にすることが知られている。しかしながら、TORC2シグナルの制御機構については不明な部分が多く、十分な理解がなされていない。TORC2-Ypk1/2シグナルは、機械的な細胞膜ストレスなどによって活性化すること、ならびにTORC2が細胞膜直下に局在することから、細胞膜とTORC2との間に機能的な関連があることが示唆されるが、その具体的なメカニズムについてはよくわかっていない。 本年度は、細胞膜とTORC2シグナルとの関連において、細胞膜の主要な成分であるエルゴステロールの関与に着目した。エルゴステロール動態がTORC2-Ypk1/2シグナルに及ぼす影響について検討するため、エルゴステロール標的薬剤やエルゴステロールに対して親和性を有する薬剤の影響についての解析を行った。その結果、アムフォテリシンB(AmB)、ナイスタチン、およびエデルホシンがTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化を抑制することを見出した。AmBとナイスタチンに関しては、TORC2-Ypk1/2シグナルの阻害とともに強い細胞毒性を認めたが、エデルホシンにはTORC2-Ypk1/2シグナルを阻害する濃度において、強い細胞毒性は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞膜とTORC2シグナルとの関連において、エルゴステロールに着目し、TORC2-Ypk1/2シグナルの活性化を阻害するステロール親和性の薬剤として、エデルホシンを見いだすことが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
エデルホシンにTORC2-Ypk1/2シグナル活性化の阻害効果が認められたため、エデルホシンによる阻害機構に関する解析を進めるとともに、エルゴステロール生合成酵素の変異株を用いた解析も行う予定である。
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Causes of Carryover |
TORC2シグナルの活性化と細胞膜脂質との関連性について、当初、エルゴステロール以外の脂質成分のTORC2シグナルへの影響を検討することも予定していたが、始めに着目したエルゴステロール動態とTORC2シグナル活性化の間に関連を見い出すことが出来たため、費用面でも当初想定したよりも試薬等の消耗品費が抑えられ、次年度使用額が生じた。 次年度には、次年度使用額を使用して予定している実験計画の充実をはかるとともに、TORC2シグナルにおけるエデルホシンの作用機序についての解析に使用する試薬および機器類の購入に充てたいと考えている。
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