2021 Fiscal Year Research-status Report
Endolysosomal dynamics involving microautophagy
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19K05950
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和田 洋 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50212329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CORVET / エンドサイトーシス / 初期胚 / 細胞極性 / V-ATPase |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞体制の構築の最初の段階は、単層上皮の形成を必要とする。これまでマウス初期胚の単層上皮の形成と機能維持に、細胞内小胞輸送機構、とりわけエンドサイトーシスがシグナルの制御をふくめて、きわめて重要な機能をもつことを明らかにした。初期エンドソームから後期エンドソームへの成熟に関わると考えられるCORVET複合体のサブユニットmVam8の欠損胚の解析から、エンドソームがmTORシグナルに関わることを見いだしている。mTORは細胞内のメタボリック・カタボリックのスイッチングのマスター制御機構として機能する。エンドソームは細胞基質のエネルギー状態に応じて、オートファジーを通しての物質・代謝の再編成や、あるいは内腔酸性化状態の調節などが行われている。そこで、エンドソーム膜のエネルギー状態が初期胚でどのように機能しているかを解析した。 その結果、エンドソームへH+を運ぶH+ポンプ、V-ATPaseを欠失したマウス初期胚では、細胞極性が維持されず、上皮組織が崩壊することをあきらかにした。単層上皮の形成においては細胞はapical面とbasolateral面といった異なる細胞表層を確立することが必須である。apical面とbasolateral面では、細胞膜の構成タンパク質やリン脂質が異なることが古くより知られている。細胞膜成分の生合成から場所への局在には小胞輸送が大きな役割を果たしている。 V-ATPaseによって形成される細胞内の酸性化が細胞内輸送に必須であることは、1980年代にはすでに知られていた。オルガネラ内のイオン環境がいかにして細胞内輸送を司るCORVETやHOPS分子の機能を制御するのか、その機構は四半世紀のもあいだ、未解明のまま残されている。本研究で見いだした、V-ATPaseとCORVETの関連性は、この未解決の課題の解明につながると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期胚の表現型を解析することによりmTORシグナルがエンドソーム系オルガネラの機能と密接に関連することを明らかにした。また、mTORと相互作用するV-ATPaseの欠損胚の詳細な解析によって細胞極性との関連を見いだすことができた。この結果は当初予想していなかったあらたな発見であり、今後、解析を発展させていくべき表現型であると考えている。 mVam8のzygotic expressionを欠失した胚ではE5.5に胚体外胚葉(Epi)と臓側内胚葉(VE)を確立するものの、胚体外外胚葉(ExE)ExEが欠失する。このmVam8欠失がもたらす特徴的な表現型に関して、なぜExEが特異的に欠失するのか?という疑問は未解明のまま残っている。これまでFgfシグナルを中心に解析を行ったが、野生型胚と変異胚の間で、顕著な差があるシグナル系を見いだすことはできていない。この点に関しては今後注意深く、解析を進めていく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初期胚での結果を再確認し、また実験の容易な培養細胞系を用いることを検討する。条件的mVam8破壊株よりExE構成細胞と似た性質をもつtrophoblast stem cell (TSC)を誘導してmTORやFgfシグナルの状況とCdx2, Elf5, Ets2などのキー転写因子の発現やリン酸化状態を検討してmTORからCdx2消失に至る機序を明らかにしていく。 細胞極性消失のメカニズムを探る。上皮組織をin vitroで形成できるMDCK細胞をモデル系として用いて、mTOR阻害、V-ATPase阻害など、薬理学的アプローチによって重要な分子素過程を検出する。その後、培養細胞の遺伝子編集によって遺伝学的なアプローチをおこない、検証していく。
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Causes of Carryover |
動物飼育数が当初より少なくなったため、管理に必要とする経費が少なくなった。次年度にはマウスと併せて培養細胞を用いる研究を進める。TSCを調整するにはマウスの繁殖が必要であり、その飼料と管理に充当していく。
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