2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular understanding of the parasitic castration in the rhizocephalan barnacles
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19K05953
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
岡野 桂樹 秋田県立大学, 生物資源科学部, 研究員 (40147070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
筒井 直昭 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00643785)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 寄生 / 寄生性フジツボ / フクロムシ / 寄生去勢 / トランスクリプトーム / ペプチドホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、データ解析とこれまでのデータの再検討を行った。昨年度までの結果では、寄生去勢の本質は卵巣や造雄腺への直接的な効果ではなく、むしろ、栄養を供給する肝膵臓(中腸腺)でのビテロゲニンの産生抑制を含むエネルギー不足状態の形成が原因と推測できる。一方、ヤツフクロムシのインテルナでは、CHH、ニューロパーシン、インスリン様ペプチドのホモログが高発現している。これらは栄養・生殖と関連が深いが、宿主のコントロール、インテルナ内部の制御、またはその両方に関わる可能性を否定できない。そこで、インテルナが宿主カニの体液からどのように栄養を搾取し、生殖装置であるエクステルナに輸送するかを、ヤツフクロムシのトランスクリプトームで再検討した。特に分泌タンパク質と膜タンパク質をコードする遺伝子群の中で栄養吸収・輸送に関連するものを選抜した。その結果、インテルナではグルコーストランスポーターに加え、3種のトレハローストランスポーターが特異的に高発現していた。また、体液中のタンパク質や脂質を低分子化するための分泌性,および膜貫通型消化酵素,分泌性のトリアシルグリセロールリパーゼやフォスフォリパーゼA2と膜貫通型脂質トランスポーターも高発現していた。また、インテルナでは3種類のビテロゲニンホモログが、fpkm値が4桁に達するほど高発現し、生殖の栄養源がインテルナで産生され、輸送されることが判明した。それらの結果から考えて、インテルナは体液中の糖だけでなく、脂質やタンパク質も低分子化して取り込み、ビテロゲニン類を用いてエクステルナの生殖機能を維持することが明らかとなった。宿主側、寄生性フジツボ側のターゲットが明らかになったことで、今後は個々のホルモンホモログの組換えタンパク質やノックダウンを併用し、寄生去勢を含む宿主コントロールとインテルナ機能の分子レベルでの解明が可能になった。
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