2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05955
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
上村 聡志 東北医科薬科大学, 医学部, 講師 (10399975)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 逆行輸送 / アスパラギン結合型糖鎖 / マンナン糖鎖 / 糖転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ゴルジ体で起こる逆行輸送がタンパク質に付加されるアスパラギン結合型糖鎖の成熟過程に関与しているのか、またその変化がタンパク質の寿命に関与しているのを明らかにすることである。前年度で構築した実験系などを用いて検討し、得られた研究成果は以下の通りである。 (1) 挿入変異導入法やYeast two hybrid membrane systemを使ったスクリーニング系で、現時点ではGM3合成酵素の輸送に関わる因子の同定にまで至っていない。ただし、別の観点から実施した実験によって、GM3合成酵素が膜輸送に関わるTmedファミリーと相互作用することが免疫沈降の実験から明らかとなった。(2) これまで研究に用いてきたGM3合成酵素はマウス由来であったが、ヒトのGM3合成酵素について細胞内輸送の検討も合わせて行った。その結果、マウスとヒトでGM3合成酵素の細胞内動態が明らかに異なることを見出した。(3) 酵母の糖転移酵素であるCsg1(マンナン糖鎖なし)とCsh1(マンナン糖鎖あり)のゴルジ体への局在をゴルジ体のシスゴルジマーカーおよびトランスゴルジマーカーとの共局在で詳細に調べたところ、わずかにではあるが確かな違いを明らかにした。さらに、Csg1にマンナン糖鎖を持つように改変した変異体の細胞内局在は、Csh1と類似するように変化した。つまり、マンナン糖鎖がタンパク質のゴルジ体局在に影響を与えている可能性が強く示唆される。(4) 酵母の持つスフィンゴ脂質の組成を解析する実験系を構築した。 それを用いてCsh1の糖鎖付加部位の変異体の酵素活性を調べたところ、マンナン糖鎖の有無で基質特異性の変化が起こることを明らかにした。今後、この実験系を用いてマンナン糖鎖を持つようになった改変型Csg1に基質特異性の変化が起こるかを調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画よりもやや遅れている理由は、このコロナ禍で実験ができない時期があったこと、また講義や実習などのオンライン対応でかなりの時間を取られてしまったことが大きな理由の一つである。そのため、前年度予定していたタンパク質の精製や新規取り扱いであったパルミトイル化酵素の解析はあまり実施せず、ある程度、結果の見通しが立つ実験に絞り、研究成果を積み重ねる選択をした。
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Strategy for Future Research Activity |
哺乳動物のGM3合成酵素に関しては、Tmedファミリーとの相互作用が明らかになってきたので、Tmedタンパク質の変異細胞を作製し、GM3合成酵素の細胞内動態を解析することで、その相互作用の意義を明らかにしていく予定である。GM3合成酵素の細胞内での酵素活性を調べようとして、細胞内にGM3合成酵素を単純に発現させると、その酵素量が過剰になってしまい、細胞内での正確なGM3合成能力を評価することが難しい。その問題点を克服するためにGeneSwitchを利用したGM3合成酵素誘導系の実験系構築を前年度より進めている。この実験系でin vivoのGM3合成酵素の活性を正確に評価できるようにし、GM合成酵素の逆行輸送の変異が細胞内のGM3合成活性にどのような影響を与えるかを検証する。 出芽酵母の糖転移酵素に関しては、巨大なマンナン型糖鎖の有無でゴルジ体への局在パターンが異なることが明らかとなってきたので、その変化が酵素としての基質特異性や安定性にどのような影響を与えるのかを解析する。また、ゴルジ体間の逆行輸送配列に変異を入れた場合に、in viivoの酵素活性やその基質特異性、酵素の安定性に影響が出るかを調べる予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた出張に行くことができなかったことに加えて、予定していた物品費額よりも少なかったため、次年度に繰り越すことになった。繰越分は次年度の物品費、脂質解析に必要な冷却機の購入に使用する予定である。
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