2020 Fiscal Year Research-status Report
宿主共生経路と既存経路のコミュニケーションによるマメ科植物の根粒発達制御
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19K05959
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
征矢野 敬 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 准教授 (60532819)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 根粒共生 / 植物微生物相互作用 / 器官形成 / ミヤコグサ |
Outline of Annual Research Achievements |
PUCHI下流遺伝子として同定したACS遺伝子の機能解析を進めた。ACS過剰発現は根粒の形成を抑制した。PUCHI1プロモーターでACSを発現させた場合にもpuchi1 puchi2二重変異体の表現型が抑圧されると期待したが、そのような結果は得られなかった。ACSのプロモーターGUSを作成して、根粒菌接種後の発現部位を調べた。GUSの発現は根粒原基周辺で弱く広範囲に検出されたが、PUCHI遺伝子のような根粒原基基部での強い発現は見られなかった。変異体の表現型からPUCHI遺伝子は根粒原基周縁部の皮層細胞分裂を非細胞自律的に抑制すると示唆されるため、これらの結果を考慮すると、ACSはPUCHIの直接的な標的遺伝子ではないと考えられた。また、ACS遺伝子の機能を明らかにするため、ゲノム編集によって変異体の作出を行なった。 根粒菌に対する初期応答においてPUCHI遺伝子はNINの発現誘導に影響しないが、PUCHI過剰発現によってNIN及びその標的遺伝子の発現が上昇する。そのため、PUCHIがNINへの正のフィードバック経路で作用すると考えられた。puchi1 puchi2二重変異体では野生型に比べてNINのプロモーターGUSの発現が低下する傾向にあった。NIN は根粒原基形成を誘導すると同時に負のフィードバック経路を活性化することで根粒着生数を減少させる。野生型において負のフィードバック経路が作用する根の領域においてもpuchi1 puchi2二重変異体では根粒原基が形成されたことから、PUCHIがNINの発現制御を介して根粒原基の着生数を抑制すると示唆された。また、感染5日後の根粒原基では野生型と比べて顕著な差は見られなかった。puchi1 puchi2二重変異体では根粒原基の形成が野生型と比べて遅延する傾向があるため、より発達初期にある根粒原基を観察する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
puchi1 puchi2変異体の表現型と下流遺伝子機能との関連からPUCHI遺伝子の根粒形成過程における役割について大雑把ながらも類推できるところまで成果が得られおり、その詳細及び仮説の検証を行う研究段階に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
ACS遺伝子のCDSの一部が欠損した系統が作出できたため、puchi1 puchi2変異体と比較しながら表現型解析を行うとともに、根粒共生に関連する表現型が得られた場合には野生型への戻し交配を進めながら、相補実験とoff targetの有無を確認する。さらに、ACS酵素の生成物であるACCをpuchi1 puchi2変異体に処理することで、変異体の表現型がACC生合成の不全によることを確かめる。また、PUCHIプロモーターでNINを発現させたコンストラクトを2020年度作成してミヤコグサに導入できたことから、この根における表現型を解析する。また、puchi1 puchi2変異体の根粒原基におけるNINの発現様式の違いについてより詳細な解析を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた次世代シークエンス解析において、サンプリング、試料調製等の予備的調査を行なっている段階であり、本実験に至らなかった。2021年度は、2020年度の未使用額と合わせて、実験計画に沿って適切に経費を使用していく。
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Research Products
(3 results)