2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of genetic modification technology using endogenous mobile elements of cereal crops
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19K05966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 卓樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (50726966)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / 転移因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では, ソルガムをモデルとして, ゲノム中に予め存在するトランスポゾンの転移を誘発することで遺伝子の機能を改変し, 転移した位置を同定して改変された遺伝子を同定するシステムを確立することを目指す.また, ソルガムの組換え自殖系統(Recombinant inbred line; RIL)を用いて, トランスポゾンの転写レベルの系統間差に関するQTL解析を行い, トランスポゾンの活性を制御する遺伝子座を同定することで, 将来の作物育種への応用を実現するための基盤を築くことを目指す. 本年度は, 当初の計画に沿ってソルガムの種子をDNAメチル化阻害剤溶液中で吸水させ, 発芽後に実生からRNAを抽出して, DNAメチル化阻害により転写抑制が解除されるトランスポゾンを選抜した.その結果, 一部のトランスポゾンの転写抑制が解除されることが明らかになった.また, 転写抑制の解除に加えて, トランスポゾンの転写物の構造が変化することも明らかになった.これらの結果から, DNAメチル化阻害剤処理がトランスポゾンの転移に影響を与えることが示唆された.一方で, DNAメチル化阻害剤で処理した植物体を圃場に展開して栽培した結果, 処理濃度に依存して生育阻害が顕著にみられることがわかった.これらの結果は, DNAメチル化の阻害による作物の遺伝子機能の改変を実現するために解決すべき重要な課題であることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は, DNAメチル化阻害剤処理により転写抑制の解除されたトランスポゾンの遺伝子座の主に転写開始点付近におけるDNAメチル化の程度を解析する予定であったが, DNAメチル化阻害剤処理によってトランスポゾンの転写抑制が解除された個体の生育阻害が顕著であったため, 成長の停止した実生から抽出した極めて微量なDNAを用いてDNAメチル化の程度を正確に評価することが困難であった.しかし, DNAメチル化の阻害効果と生育阻害効果のバランスを調整する処理濃度の設定を行うことでこれらの問題を解決できる可能性が高く, 今後の課題の推進に大きな支障はないと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 本年度明らかになった課題を念頭に置き, DNAメチル化の阻害効果と生育阻害効果のバランスを調整するために, DNAメチル化阻害剤の処理濃度を詳細に検討した上で, 研究計画を実施する予定である.その上で, トランスポゾンの転写抑制の解除がみられる個体を選抜し, 圃場または温室で栽培して, DNAメチル化の程度の解析を実施するとともに, 転移の有無をPCR等で確認する.さらに, 次世代の種子を十分に得ることで, 複数の処理系統のDNAをバルク化した上で, トランスポゾンの転移を同定する手法の確立を目指す.
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Causes of Carryover |
本年度予定していた実験の一部(DNAメチル化の解析等)については、DNAメチル化阻害剤による植物体の生育阻害によって実施が困難であった.これらの問題点を解決するための対策を準備しており、次年度使用額を令和2年度内に使用して実験を実施できると考えている.
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