2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K05969
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
加賀谷 安章 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 准教授 (20335152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諏訪部 圭太 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50451612)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 穂発芽 / 種子休眠 / アブシジン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本でのアブラナ科野菜の採種時期は梅雨と重なるため、高い頻度で穂発芽が発生し、種苗業界では深刻な問題となっている。穂発芽とは、収穫前に実った種子から芽が出てしまう現象で、種子の収量減少や新品種作出時の障害などの原因となる。申請者は、胚成長停止に関わるIAA30経路と種子休眠のABA感受性に関わるABI3経路の二重変異がシロイヌナズナの穂発芽性を誘導することを明らかにしている。そこで、「穂発芽性を示すアブラナ科野菜もIAA30とABA関連の2つの独立した経路に遺伝的欠損がある」という独自の仮説に基づき、分子生物学的手法と遺伝学的手法を駆使したアブラナ科野菜における穂発芽の原因解明を研究目的としている。 今年度は、分子生物学的手法による解析では、アブラナ科野菜のケール(Brassica oleracea)とハクサイ(B. rapa)のゲノム情報を解析し、両種ゲノムにそれぞれ3種類存在するIAA30遺伝子プロモーターではいずれもシロイヌナズナでの種子特異的発現を制御するシスエレメントに変異が生じていることを見出した。また、これら変異が原因で種子でのIAA30発現が消失することを、キャベツIAA30プロモーター::レポーター遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナで明らかにした。したがって、アブラナ科野菜で穂発芽する系統が多い理由は、IAA30プロモーターが発現制御能力を喪失する共通変異を潜在的に有していることが原因である可能性が考えられた。一方、ABA関連遺伝子については遺伝学的手法で解析を進め、20系統のキャベツの遺伝子解析と穂発芽性調査により、1系統(MMB7)が完全非穂発芽性であることを明らかにした。穂発芽性MMA1系統と非穂発芽性MMB7系統間のF1植物に実ったF2種子から穂発芽種子と非穂発芽種子を選抜し、それらを用いた次世代シークエンサーによる遺伝解析(QTL-Seq)を行い、第9染色体に穂発芽性に関わるQTLが存在することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子生物学的手法では、キャベツIAA30遺伝子プロモーターの変異が種子特異的発現を消失させることを明らかにした。また、遺伝学的解析では、完全非穂発芽系統を見つけることが最も重要な課題であったが、1系統(MMB7)を見出すことが出来たため、QTL解析を進めることが可能になり、穂発芽性に関与するQTLを見出した。そのため、両テーマとも当初の計画通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
穂発芽に関与するABA関連遺伝子について遺伝学的手法での解析をさらに進める。穂発芽性MMA1系統と非穂発芽性MMB7系統間でのゲノム比較解析により、第9染色体中の詳細DNAマーカーを構築する。また、穂発芽したF2種子を大量にサンプリングし、詳細DNAマーカーを用いて第9染色体QTL領域のファインマッピングを行う。絞り込んだ領域中のMMB1系統特異的な変異を有する遺伝子を特定することで、穂発芽原因遺伝子の同定を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた次世代シークエンサーを用いたQTL解析について、GRAS-Di法を用いることにより大幅に安価に解析を行うことが出来たため次年度使用額が生じた。その成果を基に、大規模集団を用いた穂発芽に関わるQTL領域のファインマッピングへとさらに研究を進めるため、その実験に必要な消耗品費およびシークエンサー使用料として次年度使用額を活用し、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究を進める。
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