2019 Fiscal Year Research-status Report
Genetic analysis of a leafy lemma mutant in barley
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19K05971
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
武田 真 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (40216891)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オオムギ / 芒 / 葉 / 形態形成 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
オオムギの穂先の突起である芒は、鳥獣害を防ぎ、光合成を行うことから、農業生産上極めて重要な役割を担う。オオムギはイネ科作物の中で最も構造が発達した芒を有する特徴がある。芒は種子を外側から包み込む組織である外穎の先端が伸長してできた器官と考えられている。芒は葉が変形して形成されたと考えられるが、芒の組織学的な起源や葉から芒への転換を起こす分子メカニズムに関しては不明な点が多い。本研究では、オオムギにおいて、芒が葉に先祖返りした突然変異体である葉状外穎変異体(leafy lemma)の原因遺伝子を分子遺伝学的に特定し、その機能を解明し、葉が芒に転換する機構を解明することを目的とする。 オオムギのleafy lemma突然変異体は3つの遺伝子が組合さって表現型が現れることを、交雑実験により解明した。これは、正常芒の原品種とleafy lemma (lel)変異体の交雑F2世代では(1/4)x(1/4)x(1/4)=1/64に統計学的に適合する頻度でleafy lemma変異体が出現したためである。独立の3個の劣性遺伝子がホモ接合体で揃うことにより、芒の葉への転換が起こるとみられた。そのうちの1遺伝子は短芒遺伝子であることが対立性検定により判明した。この遺伝子は花器の形態形成で重要な役割を担うことが他の植物で報告されており、転写因子である。 残る2遺伝子を特定するために、短芒遺伝子は固定で、2遺伝子が分離する集団を用いてマッピングを行った。その結果、それぞれの遺伝子は2H染色体長腕と4H染色体長腕に位置することが判明した。2H-lel因子と4H-lel因子がそれぞれ単独で1遺伝子分離する遺伝実験集団を用いて詳細なマッピングを行い、候補遺伝子の絞り込みを遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オオムギの穂先の突起である芒は鳥獣害を防ぎ、光合成を行い重要な役割を担う。芒が葉に転換する突然変異体leafy lemmaには3個の遺伝子が関与することを明らかにし、そのうちの1つは遺伝子単離済みで、残り2個も染色体上の詳細な位置が今年度の研究で特定できた。未解明の2個の遺伝子の候補を絞り込みを進め、それぞれの原因遺伝子を特定に近づいていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
オオムギの外穎葉状化変異(leafy lemma; lelと略記する)に関わる3遺伝子のうち、未特定の2遺伝子の原因遺伝子を解明を目指す。原因遺伝子は2H染色体長腕と4H染色体長腕にそれぞれ位置することが突き止められた。これを基に、1遺伝子のみが分離する大規模集団を養成し、DNAマーカーを用いて、原因遺伝子を微細マッピングし、原因遺伝子を特定する。それぞれ1,000から2,000個体の分離集団を展開する予定であり、これにより候補遺伝子が絞り込めると期待される。
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Causes of Carryover |
オオムギの未知遺伝子の特定は、巨大なサイズのゲノム配列が不完全にしか解読できていないため、困難をともなうのが通例である。しかし、研究実施者のこれまでの豊富なオオムギ分子遺伝研究の経験を活かし、試薬や消耗品等の費用を切り詰め、効率よく実験を進めた。 次年度の交付予定額が当初の申請額よりもかなり減額されて支障をきたすことが予想された。そのため、次年度に約15万円を繰り越し、次年度(2020年度)の実験遂行に支障が出ないように、この措置をとらせて頂いた。
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