2019 Fiscal Year Research-status Report
イネの多様なエピジェネティック制御を司るDNA脱メチル化酵素の分子機構の理解
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19K05974
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
小野 明美 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (90732826)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / DNAメチル化 / DNA脱メチル化酵素 / 胚乳発生 / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、イネの胚乳における多様なエピジェネティック制御の理解へ向けて、6つのDNA脱メチル化酵素の特異性がどの様に決められているのか、その分子機構を明らかにしていくことを目指している。新規基質やゲノム環境を含めた基質特異性と相互作用因子に着目し、①基質および周辺ゲノム環境の特異性の精査、②5-メチルシトシン(5mC)以外の新規基質塩基の探索、③DNA脱メチル化酵素と相互作用する因子の検出、これら3つのアプローチを進めている。 令和元年度は、①については、胚乳発生の可能なDNA脱メチル化酵素変異体について、トランスポゾンアレイを用いた解析を行った。トランスポゾンアレイは、DNAメチル化状態と連動することの多い、トランスポゾンの発現の追跡に特化したシステムである。胚乳発生過程での経時的なトランスポゾンの発現変動を、変異体と野生型との間で比較解析し、変異体に共通して変動する、あるいはそれぞれの変異体特異的に変動する、などの様々なパターンを示すトランスポゾン群を抽出した。更にその変動パターンに基づいてトランスポゾン群を分類した。これらのパターン分けされたトランスポゾン群のゲノム分布、およびその周辺配列は、令和2年度以降にゲノム環境を含めた基質選択性の共通点・相違点を理解し、DNA脱メチル化酵素の特異的な選択性の根拠を明らかにしていくうえで、有効な手掛かりとなる。②については、塩基修飾を検出できるPacBioによるゲノムシーケンスを用いて、それぞれの変異体における6mAの検出に取り掛かり始めた。検出の精度を上げていくために、サンプルの反復数・スケール等を増していくことを検討している。①、③に必要な形質転換体の作出については、継続中である。生化学的な実験等へ向けて、作出を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画全般を通して、計画以上の進展には至らないものの、令和元年度は当初の計画に沿って概ね順調に進展している。令和元年度に得られた情報を踏まえて、次年度の展開へと進めていく予定であり、当初の計画からの大きな変更はない。令和2年度については、色々な制限が避けられない局面や、予測の難しい状況も考えられるので、柔軟に対応しながら研究計画を推進していくことを心掛ける。
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Strategy for Future Research Activity |
イネが持つ6つのDNA脱メチル化酵素の特異性がどの様に決められているのか、その分子機構を明らかにしていくことを目指して、DNA脱メチル化酵素の基質と相互作用因子に着目した3つのアプローチ、①基質および周辺ゲノム環境の特異性の精査、②5-メチルシトシン(5mC)以外の新規基質塩基の探索、③DNA脱メチル化酵素と相互作用する因子の検出、に沿って令和2年度以降も進めていく。 令和2年度は、①については、トランスポゾンアレイを用いた解析から、ゲノム修飾の解析へと比重を移行していく。DNA脱メチル化酵素変異体のなかで、胚乳発生過程における経時的な発現変動の比較解析を概ね終了したものについては、マイクロアレイ解析の結果を踏まえて抽出した、トランスポゾン、およびその周辺配列に着目しながら、ゲノム環境を精査していく。特にDNA脱メチル化酵素の基質である5mCの分布にまず着目する。②については、令和元年度にDNA脱メチル化酵素変異体における6mAの検出に取り掛かり始めたところであり、令和2年度には、さらにサンプルの反復数・スケール等を増していくことで、検出の精度を上げることを試みる。また①、③については、継続して形質転換植物の作成を行う。作出が済み次第、生化学的な実験等へ向けて、随時活用していく。 令和3年度は、①-③それぞれの解析の精度を更に上げていくとともに、結果を取りまとめ総合的に考察することで、特異性を決める分子機構の全体像の理解へアプローチしていく。得られた結果は随時取りまとめ、成果の発表を国内学会、国際学会も含め行う。
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Causes of Carryover |
令和元年度に実施した研究内容はマイクロアレイを用いた解析が中心であり、既存のマイクロアレイシステムをある程度活用できたこと、効率よく解析を行えたことが、大きな理由の1つであると考えている。加えて、令和元年度に計画した次世代シーケンス解析については、“先進ゲノム支援”にて一部支援して頂いた。このような理由から、次年度使用額が生じたものである。令和2年度以降は、次世代シーケンサーを用いたゲノム解析へとシフトしていく計画であり、次世代シーケンサーを多用していくことを予定している。生じた次年度使用額、および当該年度以降分は、次世代シーケンサー解析、およびそれに付随したものを中心に使用していく計画である。また参加を予定していた国内外の学会についても、参加形態が大きく変更になることが十分予想されるので、それに対応した環境設定にも活用していく計画である。
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