2020 Fiscal Year Research-status Report
イネもみ枯細菌病菌に対する組織特異的な抵抗性遺伝子の単離
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19K05981
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
石川 和也 公益財団法人岩手生物工学研究センター, ゲノム育種研究部, 研究員 (40804703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イネ / 苗腐敗症 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の主要作物であるイネでは、いもち病や白葉枯病などが深刻な問題になっており抵抗性因子の単離などが行われている。しかしながらこれら以外にも、もみ枯細菌病や紋枯病、ごま葉枯病など様々なイネの病気が世界で蔓延しているにもかかわらず、これらに対する抵抗性品種および抵抗性因子については明らかにされていないのが現状である。特に、イネもみ枯細菌病は、もみおよび葉鞘の褐変、枯死を引き起こすとともに、箱育苗の普及により苗の腐敗 (苗腐敗症) も引き起こし、移植苗の安定供給の阻害要因となっている。しかし、もみ枯細菌病菌に対するイネの抵抗性因子については全く明らかにされていない。そこで、抵抗性因子の同定を試みた。 これまでに、ひとめぼれと比較しKALUHEENATIがイネもみ枯細菌病菌が引き起こす苗腐敗症に対して抵抗性を有すること明らかにし、その交配集団から2箇所のQTLを得ている。今年は抵抗性を持っていた交配集団に戻し交配を行った準同質遺伝子系統 (NIL) を作出し、接種実験を行った。作出したNIL2系統 (BC4F4) の全ゲノム解析を行った結果、染色体5番と染色体6番にそれぞれKALUHEENATIの領域が一部残っていたが、その箇所以外はひとめぼれであった。これらのNILsを用いて接種実験を行った結果、これらはひとめぼれと比較し抵抗性を持っており、KALUHEENATIと同様の抵抗性を有した。これらの結果、同定したQTLが抵抗性に関与することが明らかになった。さらに、圃場にて生育比較を行った結果、ひとめぼれと大きな差は認められなかった。一方、イネいもち病や白葉枯病に対する抵抗性に、ひとめぼれと比較し差は認められなかった。これらに戻し交配を行い、QTL領域以外ひとめぼれの新たなNILも作出しており、2021年度に圃場で生育比較を行う予定である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに得られているイネもみ枯細菌病菌に対する抵抗性に関するQTLを有するNILsの作出を行い、接種実験により抵抗性を有することを確認できた。更に戻し交配も行っており、QTL領域以外ひとめぼれのNILも作出している。今年度圃場で生育比較を行う予定であり、概ね順調に進展している。 さらに、その抵抗性機構も明らかになりつつあり、これまでに作出したNIlsや変異体を用いて解析を行えるだけの種子を得ており、滞りなく進展している。 また、葉鞘における抵抗性因子についてはひとめぼれが抵抗性を有していたため、品種作出の観点から後回しにし、もみにおける抵抗性について解析を行うことにしたが、昨年夏の天候不順により不稔の症状が認められる系統が多く存在したため解析を諦めた。今年度、もう一度解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
苗腐敗症に関してはこれまでに作出したNILs、更に戻し交配した新たなNILの圃場での生育比較と耐病性、さらに、その抵抗性機構の解明を行う。 抵抗性機構については、RNA-seq解析の結果から病害抵抗性に関与するホルモンであるサリチル酸やジャスモン酸のシグナル伝達系以外にもサイトカイニンやジベレリンのシグナル伝達経路もひとめぼれと比較しKALUHEENATIでは活性化していた。これまでに、アブシジン酸は上記の各シグナル伝達経路を阻害することが報告されていることから、ABAシグナリングの抑制機構が抵抗性に重要であると考え、今後ホルモン処理などを行い解析を行っていく予定である。 また、もみにおける抵抗性に関わる因子についても同定を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
REAL-TIME PCRの試薬などいくつかの試薬や実験器具に関しては、欠品などにより昨年度中の納品が間に合わないため今年度購入することになった。 また、年度末に毎年行われている学会に関してもオンライン開催となり旅費を繰越すことにした。
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