2019 Fiscal Year Research-status Report
コムギ縞萎縮病に高度な抵抗性を示すYmym遺伝子領域の特性解明と候補遺伝子の探索
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19K05982
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小林 史典 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 主任研究員 (80584086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 久代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 主任研究員 (70547728)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コムギ / コムギ縞委縮病 / Q.Ymym / 2D染色体 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの解析から、Q.Ymym領域内5カ所のゲノム配列を構築し、当該領域が特殊な塩基配列構造を持つことを明らかにした。本年度は、その特殊性が他の品種にも存在するかどうかを調査するために、公開されている10品種のゲノムデータなどについて、Q.Ymym領域に相当する領域の配列調査を行った。調査した10品種のうち、「ArinaLrFor」(スイス)、「Jagger」(米国)、「Julius」(ドイツ)、「SY Mattis」(フランス)が、Q.Ymym領域と同様のハプロタイプブロックを持つと推定された。他にスイスの「CH Campala Lr22a」も同様のハプロタイプブロックを持つと考えられ、Q.Ymymに相当する領域には408個の遺伝子がアノテーションされていた。そのうち9遺伝子は、「CH Campala Lr22a」特異的であった。「ゆめちから」の全ゲノムシーケンス解析によって、これらの特異的遺伝子が「ゆめちから」にも存在することがわかった。 Q.Ymymの候補遺伝子を探索するために、Q.YmymのNIL(TY714-10)のEMS処理による突然変異体集団を作出した。EMS処理したTY714-10の種子(3000粒)から、M2集団(約2000個体×10セット)を作出した。このうち1セットを宇都宮の汚染圃場に播種したが、感受性個体を得ることができなかった。今シーズンは暖冬であったことが影響しており、試験全体的に感染度合いが低かった。 Q.Ymym領域の由来を調査するために、「ゆめちから」の系譜上の品種・系統およびコムギ近縁種を用いて、Q.Ymym領域で見出された配列変異をDNAマーカーにより調査した。その結果、Q.Ymymは米国のコムギ系統「KS831957」、さらにその親の「Plainsman V」に由来すると考えられた。またコムギ近縁種においては、スペルトコムギの一部の系統やAegilops triaristataに「ゆめちから」と同様の多型が検出された。以上のことから、Q.Ymym領域は野生種から移入された可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ゆめちから」のNGSデータによる遺伝子配列の解析、TY714-10の突然変異体集団の作成は予定通り進んだ。またQ.Ymym領域の由来の調査については、コムギ近縁野生種に由来する可能性を示すことができた。以上により、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seq解析により、Q.Ymym領域の遺伝子発現解析を行う。TY714-10の突然変異体集団の縞萎縮病達観調査、逆遺伝学的選抜系の構築を継続する。Q.Ymymと同様のハプロタイプを持つと推定される野生種の抵抗性試験を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 消耗品類の安価な購入など、効率的に執行した結果、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度の予算と合わせて有効に使用する。
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