2019 Fiscal Year Research-status Report
Identification of QTLs affecting good eating quality of cooked rice by improvement in novel grain components.
Project/Area Number |
19K05984
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
堀 清純 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 上級研究員 (50442827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻井 良政 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (70607671)
田中 淳一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 上級研究員 (30370571)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イネ / 食味 / 炊飯米 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のゲノム解析技術の発達により、イネの収量性を制御する複数の重要遺伝子が同定され、その単離遺伝子を利用した育種素材の作出が進められている。しかしながら、もう一方の最重要な育種選抜形質である米の品質、特に炊飯米の食味や食感を制御する遺伝要因(遺伝子)のほとんどは明らかとなっていない。これまでの解析により、最近の良食味品種は炊飯米の粘りが強く柔らかく胚乳中の細胞壁分解酵素活性が低い傾向を示すことが明らかとなった。そこで、細胞壁などの新規の穀粒成分を改変することにより、炊飯米の物性を変化させて新しい食感を付与することが可能であると考えられた。本研究では、胚乳の細胞壁成分を改変して炊飯米の食感や食味を向上させる遺伝要因を解明することを目的として、炊飯米食味の異なるイネ品種に由来する交配後代集団の遺伝解析を実施している。 今年度は、特に、白米中のアミロースやタンパク質含有率がほぼコシヒカリと同等であるが、炊飯米は粘りが少なく硬い品種である多収品種タカナリの遺伝解析集団において、炊飯米の食味関連形質を調査してQTL検出を試みた。第1染色体長腕、第2染色体長腕、第4染色体長腕、第5染色体長腕、第11染色体長腕上に、炊飯米の白さや粘りや硬さに関する新規の食味QTLを検出した。これらのQTLの一部は、アミロースやタンパク質含有量とは異なるメカニズムで食味改変が可能な遺伝子座であると考えられる。また、これらの染色体領域を他のインディカ品種の染色体断片に置換した系統群においても、これらのQTLの効果を確認できたことから、検出したQTLは多収インディカ品種の食味向上に利用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的に課題の進捗に大きな問題はない。当初の計画通りに、多収品種タカナリの遺伝解析集団を用いて新規の食味遺伝子座を複数検出することができた。また、遺伝子単離を進めている良食味QTLの機能解析も実施するとともに、これまでに検出した食味遺伝子座を集積した準同質遺伝子系統群の作出も開始した。今後、研究成果を発信するために、原著論文のとりまとめを進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では炊飯米の食味を決定するQTLを検出後に、候補遺伝子の単離・同定を目指しているが、単離した食味遺伝子の詳細な機能を証明するためには、その遺伝子がどのように炊飯米の食味を変化させているのか等の食品科学工学的な解析による機能解明が必須である。次年度は、単離した良食味遺伝子の機能証明を重点的に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度に当初計画していた本研究課題に関する研究補助員の賃金について残金が発生したことから、その相当分を後述の課題遂行のために令和2年度に繰り越すこととした。本研究課題では、これまでに検出した炊飯米の食味を決定するQTLについて遺伝子の単離・同定を進めているが、単離した食味遺伝子の詳細な機能を証明するためには、追加の分子生物学実験や網羅的な遺伝子発現・含有化合物量の測定実験や食品工学的手法による炊飯米評価などが必要である。次年度使用額は、候補遺伝子の機能証明を目指したこれらの解析実験に使用する予定である。
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