2020 Fiscal Year Research-status Report
大豆ペクチンメチルエステラーゼと煮豆の硬度との関係に関する遺伝学的・形態学的研究
Project/Area Number |
19K05985
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
戸田 恭子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 上級研究員 (10360447)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ダイズ / 煮豆硬度 / ペクチンメチルエステラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
既に大豆遺伝子Glyma03g03360が煮豆硬度に影響を及ぼすペクチンメチルエステラーゼ(PME1)であることを明らかにし、さらに遺伝子発現データ等から新たに種子で発現するペクチンメチルエステラーゼ(PME2)に着目した。大豆品種「フクユタカ」のEMS突然変異系統と「エンレイ」とを交配し、世代促進をしてPME1, PME2両遺伝子の変異を有する系統を複数作出した。これらの変異はPME1, PME2のペクチンメチルエステラーゼ活性の失活を引き起こすことが塩基配列より推察されている。PME1, PME2両遺伝子変異系統の種皮の煮汁からは、PME1のみ変異を有する系統とほぼ同量のガラクツロン酸が検出され、細胞壁ペクチンの構成糖であるガラクツロン酸可溶性へのPME2変異の影響は見られなかった。長期保存した大豆から調製した煮汁に溶出したガラクツロン酸に関しては、保存時の温度条件による有意差は検出されなかった。一方、長期保存した大豆より調製した煮豆からテクノビット包埋切片を作製し、ペクチンに対して高い親和性のあるルテニウムレッドで染色・観察した結果、保存の温度条件により細胞壁の染色性に変化が見られ、現在さらに解析を進めている。PME1, PME2両遺伝子の変異系統については、2020年度当研究所ほ場で栽培・収穫したサンプルの煮豆硬度を測定し、異なる温度条件で長期保存中である。また、ペクチンの架橋に関与するカルシウムの種子中含量が異なる準同質遺伝子系統を作出し、煮豆硬度が有意に異なる結果が得られたので、保存による煮豆硬度変化等も同様に調べる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
煮汁のガラクツロン酸分析の結果から、当初の予想に反してペクチンの可溶性は保存中の煮豆硬度変化には関与しないことが示唆されたが、細胞壁の染色性に関するデータから、ペクチンなど細胞壁多糖類が何らかの影響を及ぼしていることが示唆されたため、引き続きPMEや、それに加えてペクチンの架橋に関与するカルシウムの影響について調べる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度作出したPME1PME2両遺伝子変異系統等を用いて保存による煮豆硬度変化を解析する。煮汁の糖分析など生化学的解析や細胞壁の染色性等形態学的解析から、保存による煮豆硬度変化の要因を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初の計画よりも試薬購入費を抑えて研究することが出来たことと、出張を控えたため旅費を使用しなかったためである。次年度は煮豆硬度分析サンプルを当初計画より増やす予定である。煮豆硬度分析は時間と手間がかかるため、補助員による作業が増える見込みであり、その分増えた人件費に次年度使用額を使用する予定である。
|