2019 Fiscal Year Research-status Report
Improving drought tolerance through ear photosynthesis in wheat
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19K05988
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柏木 純一 北海道大学, 農学研究院, 講師 (60532455)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 干ばつ抵抗性 / コムギ / 穂光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,土壌水分処理および穂の光合成を制限する処理を行い,干ばつ環境における穂の光合成が,コムギの生育,収量および光合成関連形質に及ぼす影響について調査した. 北海道大学の試験圃場に作出した干ばつ圃場で試験を行った.出穂期以降に潅水区と干ばつ区の2水準の土壌水分処理を作出し,これに開花後の穂の遮光処理を組み合わせた4処理区を設けた.さらに,異なる干ばつ圃場において,土壌水分処理と穂の薬剤処理を組み合わせた4処理区を設けた.穂薬剤処理では,蒸散抑制剤を穂の表面に塗布した.試験には,「春よ恋」(北海道育成),「SW15」および「Cham6」(共にシリア育成)を供試した.研究結果の概要は以下の通りである. 1)収量に対する穂の光合成の寄与率は20%前後であった.品種の特性として,SW15およびCham6では,乾燥区での穂の光合成が収量および群落光合成に及ぼす寄与率は,潅水区よりも高かった.すなわち,これらの品種は土壌乾燥によって,穂のソースとしての相対的重要度が高まる特性を有する可能性が示唆された. 2)収量は,穂薬剤処理では有意な減少が認められなかった.これは,光合成のCO2供給源が,穂の表面が接する大気だけでないことを示唆している.代替のCO2源としては,子実の呼吸が考えられ,それを頴内側の気孔で吸収し,光合成を維持したと推察された.これは,気孔が閉鎖する干ばつ環境においても,穂が葉よりも高い光合成を維持できるメカニズムになり得ると考えられた. 3)群落光合成に対する穂の光合成の寄与率は,10~20%であった.群落光合成に対する穂の光合成の寄与率は,葉面積と負の相関を示した。これは,葉での光合成が減少すると,穂の光合成の寄与率が相対的に増加したことを示している.すなわち,干ばつストレスにより,葉での光合成が減少すると,その補償作用として穂の光合成が機能する可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
干ばつ環境下におけるコムギの穂光合成の収量に対する貢献度を推定することができたことは,本研究の目的を達成する上で重要な進展と考える.ただ,穂光合成速度測定用の専用チャンバーの作成が遅れており,これについては2020年度の完成を目指している.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られた結果について,同様の圃場試験を行うことで,栽培環境の年次変化に対する安定性を確認する.これと並行して,干ばつ環境を作出するレインアウトシェルター内にポット試験区を設けて,穂光合成速度測定用の専用チャンバーの作成用の実験を行う.
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの拡大により,参加を予定していた日本作物学会第249回講演会(於つくば)が開催中止となったため.この予算については,完成がやや遅れている穂光合成測定専用チャンバー作成のために行う2020年度の試験遂行に充てる予定である.
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