2020 Fiscal Year Research-status Report
ダイズの一斉登熟性を引き起こす窒素再転流の制御機構
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19K05999
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鄭 紹輝 佐賀大学, 農学部, 教授 (90253517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 大輔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80721274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイズ / 一斉登熟性 / 老化 / 窒素転流 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ダイズの一斉登熟性に関わる窒素制御機構を明らかにする目的で、2020年度では、シンクとソースのバランスによる制御を確認し、さらにダイズ登熟過程における遺伝子発現の網羅的解析(RNAシーケンス)をおこなった。シンク/ソースのバランス実験では、本年度は品種Bayを用い、子実肥大中期(R6)にソース減(50摘葉)とシンク減(50%摘莢)を行い、さらに前者には窒素を増やし、後者には窒素を減らした処理も行った。その結果、ソース減は葉の老化を早め、シンク減では老化を遅延させたが、ソース減に高窒素処理では、葉の老化が遅延され、シンク減に低窒素処理では葉が老化傾向を示したことから、窒素が葉の老化を制御する主要因であることが示唆された。 また、R6期に低窒素及び高窒素処理された植物葉の遺伝子発現解析した結果、低窒素条件で発現が増加したものが33遺伝子、高窒素条件で発現が増加したものが69遺伝子見つかった。そこで、一斉登熟性を引き起こす低窒素条件で顕著に発現がみられた5つの遺伝子を選び、培地の窒素濃度が制御できる砂耕栽培されたダイズについて再解析の結果、GLYMA02G06870、GLYMA03G00770及びGLYMA10G37660は既知の一斉登熟性関連遺伝子であるGmATG8c及びGmSGRと同様に低窒素条件で発現量が増加し、GLYMA14G01405、GLYMA06G11430は逆に高窒素条件で発現量が増加した。GLYMA02G06870(光化学系Ⅰ関連)とGLYMA10G36760(エチレン関連)はGmSGRより遅れて3週目に発現量が急増する傾向が見られた。これら低窒素で発現が顕著な遺伝子は一斉登熟性に深く関わっている遺伝子である可能性が高いと考えられ、今後さらに解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ダイズの一斉登熟機構と窒素転流の関係を生理的現象から遺伝的制御まで解明しようとするもので、これまでシンク・ソースのバランスの崩れによる葉の老化遅延は炭素よりも窒素が主導的な役割を果たしていることを明らかにし、また、それにかかわる対象遺伝子もいくつかわかってきた。しかし、それらの作用機作の解明はこれからの課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
一斉登熟現象において、窒素の多寡と炭素の多寡の相互作用をより明らかにするとともに、関連制御遺伝子の作用機作をさらに解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
国際学会の延期により、出張旅費が支出できなく、また遺伝子解析に予算を多く配置予定で予定で残金が予定より多くあった。これらの項目について次年度で実施予定である。
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