2019 Fiscal Year Research-status Report
黒ボク土と赤色土におけるソバのリン栄養と収量および品質との関係
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19K06002
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
鬼頭 誠 琉球大学, 農学部, 教授 (50252797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金城 和俊 琉球大学, 農学部, 准教授 (30582035)
原 貴洋 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (40355657)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ソバ / リン栄養 / 窒素栄養 / 黒ボク土 / 赤色土 / 難溶性リン |
Outline of Annual Research Achievements |
黒ボク土と赤色土のソバ栽培地土壌の調査を熊本県と沖縄県で実施した。両土壌ともソバの収量が高い栽培地ではリンの存在形態など理化学性の違いはあるものの窒素などは肥沃な土壌であった。また、黒ボク土圃場では窒素とリンの施肥量を最大で1/4に減少させるプロットを準備して栽培したが、収量の低下は見られず、過去の栽培で肥料成分の集積があることが明らかになった。 リン肥沃度を4段階にした赤色土でのソバの茎葉リン含有率はリン施肥量に応じて減少したが、子実収量と子実リン含有率はリン無施肥区以外低下せず、有意差はないもののリン施肥量の減少でむしろ収量高まる傾向があり、リン肥沃度の低下は子実千粒重の低下する側枝子実の減少と主茎子実の増大のためと思われる結果が得られた。なお、ソバ栽培前後の赤色土のリン含有率の変化を調査した結果、先行試験と同様にAl型リンの利用率が高く、赤色土に多く固定されるFe型リンの利用率は低かった。 緑肥、落花生の収穫残渣と堆肥の施用によるソバの生育量は化学肥料区に比べて低下しなかった。特に緑肥の表面施用と堆肥の側条施肥はソバの収量を高めることが明らかになった。この原因として、窒素の緩効化により、収穫期までの光合成が高く維持され、側枝子実の千粒重の増大効果があったと考えられた。 ソバの収量増大と適切な施肥量の決定には窒素とリンの施肥による側枝子実への影響について明らかにする必要があると考えられ、ポット試験などのモデル試験も含めた調査を計画し、一部試験を開始している。 黒ボク土と赤色土での各種施肥条件におけるとソバの品質に関する調査は現在行っている試験の子実を含めたサンプルの選別を行う必要があると考え、測定を行っていないが、タンパク質、各種ミネラルとルチン含有量は2019年度には行っていないが、現在分析の全処理を行いつつある。得られた成果は今後、日本作物学会などで発表を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の調査予定であるソバ栽培現地圃場の土壌調査は概ね行えた。ソバ栽培に問題のある土壌での栽培は基本的に行われていないことが示された。また、日本の畑地でのリンの集積が問題になっている。標準施肥を行ってきた黒ボク土圃場でもリンの集積が確認できたため大幅な減肥栽培の可能性があると思われる。施肥基準の再検討の必要性が改めて示すことができた。 ソバはAl型リンを利用しやすく、Fe型リンの利用は少ないことを赤玉土やバーミキュライトを用いた養液栽培による先行研究で示した。黒ボク土と赤色土を用いたリン施肥量を異にした栽培試験の結果も同様の結果になる異を明らかにできた。また、リン欠乏条件では主茎子実の割合が高くなり、未熟子実の増加や千粒重の小さくなる側枝子実が減少するため収量が減少しない可能性を示せた。 また、有機質肥料など緩効性窒素肥料の利用は、化学肥料の基肥のみでの栽培に比べて収穫期まで葉色(SPAD値)が高く維持され、光合成も高くなっていると推察できた。その結果、側枝子実の千粒重は主茎子実と同程度になるため収量の増大につながる可能性を示すことかできた。 本課題ではソバのリン栄養を中心に検討する異になっているが、植物栄養上重要な窒素栄養を含めたソバの収量と肥培管理について検討する必要性が示された。 ソバの品質の関する試験データはないが、過去の栽培試験の結果も含めたソバ子実の品質の測定について、肥培管理や土壌の種類とソバの収量の関係を踏まえたサンプルの選定を行っており、次年度早々に随時測定を行う準備はできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の試験結果をもとにソバのリン吸収特性を明らかにするモデル試験を開始する。また、当初計画には含まれていないが、窒素肥料の緩効果とソバの生育、収量との関係について増収につながる結果も示されたため、緩効性窒素肥料などの利用によるソバの収量と品質への影響も合わせてポットレベルでのモデル試験と圃場試験を行い調査する。 ソバの品質についての試験では、すでに準備した子実サンプルの各種ミネラル含有率、タンパク質質含有率、ルチン含有率の測定を行い、土壌の種類、肥培管理および収量と品質の関係について調査を実施する。 さらに、先行試験でリン欠乏条件下でのソバは根重画像化する異が明らかになっている。ソバの根系発達とリンを中心にした養分吸収を調査する根箱などを用いた養液栽培等の栽培方法の検討を行う計画である。 なお、得られた成果は関連する日本作物学会等での発表ゆ論文の投稿を行うとともに、沖縄や九州のソバ栽培地に情報を発信することに努める。
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Research Products
(1 results)