2020 Fiscal Year Research-status Report
水稲再生二期作栽培における再生茎発育の遺伝的変異と収量形成
Project/Area Number |
19K06006
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
塩津 文隆 明治大学, 農学部, 専任講師 (60543907)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 洋一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50463881)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | イネ / 水稲再生二期作 / 再生茎 / 萌芽 / 品種 |
Outline of Annual Research Achievements |
収穫後のイネ刈り株から再生する茎から籾を再度得る再生二期作栽培は、イネの年間生産量を向上させる方法のひとつである。しかし、再生二期作目の生産性の低さが問題である。そこで、本研究では、水稲再生二期作栽培による年間生産量を高めるために、再生茎の萌芽形成の生理生態機構の解明、再生二期作に適した品種の同定および収量形成への窒素追肥による影響について取り組んだ。 まず、前年度の結果から、一期作目の2次分げつの割合を高め,一期作目の2次分げつから発生する再生茎を増加させることが収量の向上につながると考えられた。そのため、ポット試験において、栽植密度の変化による分げつの制御が、再生茎の発生や収量に及ぼす影響について検討した。解析の結果、栽植密度の変化により、一期作目の2次分げつの割合、一期作目の2次分げつから発生する再生茎の割合を高められることが明らかとなり、再生二期作目の収量性の向上の可能性が示唆された。また、一期作目収穫前後の施肥時期と刈り取り高さが再生二期作目の収量について検討した結果、高刈りによって刈り株に含まれる非構造炭水化物含有量の増加が,再生茎数の増加に寄与し,再生二期作目の収量増加に繋がること示唆された. 圃場試験では、前年度の15品種から選定した早生水稲9品種を用いて、早期栽培と晩期栽培から多収に寄与する生育特性を検討した結果、水稲再生二期作栽培の実用化には,分げつ期の低温環境に対する一期作目の収量安定性が課題となることが示唆されるとともに、有望な品種を同定した。また、1期作目の登熟期間中に窒素を施用することで、再生茎と穂数が増加し、再生二期作目の収量が増加した一方で、玄米品質に悪影響を及ぼす可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栽植密度、刈取り高さ、施肥管理が再生茎の萌芽形成および収量形成に及ぼす影響についての具体的なデータを得ることができた.これらについては年次を重ねて再現性を確認してく必要がある。また、再生二期作栽培に適した水稲品種が選定されるとともに、実用化に向けての生育特性を明らかにするとともに、有望な品種も選定できた。さらに、鹿児島県において再生二期作栽培の普及を想定し、再生二期作栽培の水管理および施肥管理と収量および品質・食味との関係について検討し、目標に近い収量性を得ることができた。一方、品質・食味については当初計画にはなかったものの、普及を考えた場合、必要なデータとなるため、データ取得を開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
収量を高めるために重要な再生茎の発生に、刈り株内における非構造性炭水化物が関係しているのかを安定同位体を用いて詳細に検討する。同時に,追肥処理や再生二期作目の根系形成と再生茎および収量との関係について検討する。また、選抜した早生水稲の生育特性、再生二期作目の再生茎発生の品種間差の検討を重ねる。さらに,鹿児島県および香川県において、水稲再生二期作栽培の収量評価を行い、普及に目指したデータ取得を行う予定である。これらの結果を取りまとめて、学会発表や学術論文として報告する。
|
Causes of Carryover |
2020年4月以降のコロナ禍により、国内および海外渡航が大きく制限されたため、次年度使用額が生じた。2021年度はコロナ禍の状況をみつつ、国内調査旅費および海外調査旅費として回数を増やして使用する。また、研究の進捗に伴い、新しい消耗品や試薬の購入に充てる計画である。
|