2021 Fiscal Year Research-status Report
Understanding of yield instability of vegetable soybean grown continuously in paddy-converted upland field
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19K06007
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
大門 弘幸 龍谷大学, 農学部, 教授 (50236783)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サイトカイニン / 湿害 / 受光態勢 / 水田高度利用 / 窒素固定 / 着莢 / 転換畑 / 有機農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
水田農業の高度化の一方策として,湿害回避が比較的容易で高品質化による高い販売単価の設定が可能な2月播種による「早期栽培エダマメ」の安定生産技術の開発があげられる.本研究では,その基盤となる着莢数制御の生理生態学的知見を得ることを目的に,4年間の研究計画を立案した.初年目は,密植により単位面積当たりの収量が増加することを示した.2年目は,受光態勢に着目し,1条区と3条区を設け,1株莢数,1株莢重,分枝着莢節数,着莢節当たりの莢数が1条区で高く,分枝による莢数の確保が重要であることを示した.一方,無加温ビニールハウスにおける6月播種普通栽培において開花期前に行った莢数確保のための断根処理後には著しい萎凋が見られ,断根方法の再検討が必要であることが示唆された. 研究3年目にあたる本年度は,これまでと同様に極早生品種の‘えぞみどり’を供試して,無加温ビニールハウスにおける2月播種早期栽培ならびに露地圃場における6月播種普通期栽培を行い,いずれの栽培においても花蕾形成が確認できた時期に断根処理を行い,収量ならびに子実ショ糖含有量に及ぼす影響を調査した.その結果,2月播種においては,断根により1粒莢の割合が減少し,3粒莢の割合が増大した.なお,着莢分枝数は断根によりやや減少した.無処理区では一部の個体で倒伏が生じたが,断根処理区では不定根の発生が促され,倒伏程度は低かった.6月播種においても断根処理区で莢数の増加が認められたが,2月播種とは異なり,着莢分枝数も断根処理区でやや多い傾向となった.子実のショ糖含有率は,いずれの栽培においても断根処理区でやや高い傾向を示した.本研究では,断根により根端数が増えることでサイトカイニン合成が高まることを仮設したが,サイトカイニン分析に必要な道管液が安定して採取できなかったことから分析に必要な十分な反復数がとれず,次年度の解析を待つこととなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2月播種の無加温ハウス栽培および6月播種の露地栽培のいずれの作付けにおいても,花蕾形成時期における断根処理が莢数を増加させる可能性を示すことができ,概ね計画通りに研究を遂行できたと考えている.これまでの2年間の試験においては,断根処理後の地上部の萎凋の程度が個体間で大きく異なり,対照区と断根処理区において,道管液のサイトカイニン含有量の解析のための十分な反復数を確保できなかった.したがって,断根処理の方法について再検討することがさらなる課題として残されたが,本年度は断根用に市販の鉄板を適宜加工し,これを用いて株元への断根処理をより丁寧に行うことができ,土壌断面における断根の程度を確認することもできた.これにより最終年度となる次年度における断根処理実験を進めることが可能となった. また,収穫したエダマメの品質評価については,エダマメの品質として重要なショ糖含量における断根処理の影響を上述の通り明らかにすることができ,今後その機序を解析することが次年度への課題としてあげられた.道管液中のサイトカイニンの定量については,L字管とシリコンチューブを用いた採取法の再検討を進めたが,必ずしも安定した採取法にはならず,さらなる採取方法の確立が必要であるものの,少量ではあるがこれまでより多くの個体での採取が可能となった. 以上のことから,2期作による栽培試験の実行,適切な断根処理,および道管液採取によるサイトカイニンの解析など,本研究の進捗状況は概ね順調であると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,生産調整が必要となっている水田の高度利用の一方策として転換畑に設置した無加温ビニールハウスにおける早期エダマメ栽培の導入について検討し,3年間にわたる継続した圃場試験において,いくつかの有用な知見を得ることができた.2月播種の早期栽培については,これまで通り無加温ビニールハウス内で試験を2年間にわたり行ったが,6月播種普通栽培については,エダマメ個体の徒長と倒伏が著しかったために3年目からはハウス外での露地栽培によって試験を遂行した. 最終年度にあたる次年度は,両栽培方法において,さらに詳細に検討を進める予定である.すなわち,1)断根処理が着莢数と一莢内粒数に及ぼす影響について解析することに加えて,断根処理の機械化の手法を考案し,実際栽培への応用の可能性を検討する.現在,サブソイラーを改変した土壌亀裂機具の導入を試みているところである.また,2)断根処理後に根端数が増加することを想定し,道管液のサイトカイン含量の変動についてさらに詳しく解析し,莢数制御の機序解析に資する.3)6月播種普通期栽培後に葉菜類を栽培し,エダマメ2期作と葉菜類の輪作における養分動態,特に窒素の動態について明らかにし,肥料低減型の輪作体系の開発に資する予定である.さらに,4)窒素固定活性の高い有用根粒菌の接種技術を開発することで,比較的低温条件でも着生が早く,窒素固定酵素の活性が高いエリート根粒菌を探索し,土着菌との競合に負けない施用方法を確立する.現在までに,抗生物質抵抗性を有するエダマメ(ダイズ)根粒菌を京滋地区の水田転換畑から選抜できたので,これまでの標識遺伝子を導入した根粒菌の利用に加えて,これらの菌株を用いて,圃場条件下での接種根粒菌と野生菌株との間の競争関係を解析する予定である. 以上の研究を遂行することで,最終年度までの4年間の研究をとりまとめる.
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Causes of Carryover |
当初予定していた分析補助の学生アルバイト謝金について,年度末において雇用時間の調整ができずに次年度支出としたことによって,60782円について次年度使用額とした.これらについては次年度に支出する予定である.
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Research Products
(2 results)