2019 Fiscal Year Research-status Report
カンキツ果実におけるβ-クリプトキサンチンのエステル化機構の解明
Project/Area Number |
19K06015
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
張 嵐翠 静岡大学, 農学部, 特任助教 (20767371)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カンキツ / カロテノイド / キサントフィル / エステル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,カンキツ果実において主要なカロテノイド色素であるβ-cryptoxanthinをエステル化するキサントフィルエステル化酵素(Xanthophyll esterase; XES)遺伝子の探索および果実の成熟過程におけるカンキツ5品種のCitXESの発現解析を行った。 令和元年度は,ウンシュウミカンの‘宮川早生’と ‘山下紅早生’,太田ポンカン’,‘ダンシータンジェリン’および‘かんきつ中間母本農6号’の9月~12月における果皮および果肉について,カロテノイド抽出溶媒を用いてフリー体およびエステル体のβ-cryptoxanthinを抽出し,含量をHPLCにより測定した。 5品種の果皮および果肉におけるβ-cryptoxanthinのフリー体およびエステル体の含量を比較すると,いずれの品種においてもエステル体の含量が高く,約90%がエステル体であった。カロテノイド生合成遺伝子の発現レベルはβ-cryptoxanthinの含量の増大に伴い上昇した。特に,果皮におけるCitPSYの発現レベルは,いずれの品種においてもβ-cryptoxanthinの含量増大に伴い上昇した。CitXESの発現レベルは,9月から成熟に伴い上昇し,この発現レベルの上昇はCitPSYの発現レベルおよびβ-cryptoxanthin含量の増大よりも早く認められた。 以上の結果より,CitXESは果実の成熟の早い段階で発現レベルが上昇し,カロテノイド生合成遺伝子の発現上昇により生合成されたβ-cryptoxanthinを速やかに脂肪酸とエステル化すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は,ウンシュウミカンの‘宮川早生’と ‘山下紅早生’,太田ポンカン’,‘ダンシータンジェリン’および‘かんきつ中間母本農6号’のカンキツ5品種の果皮および果肉について,β-cryptoxanthin含量の変動,カロテノイド生合成遺伝子およびキサントフィルエステル化酵素CitXESの遺伝子発現変動を調査した。CitXESは果実の成熟の早い段階で発現レベルが上昇し,カロテノイド生合成遺伝子の発現上昇により生合成されたβ-cryptoxanthinを速やかに脂肪酸とエステル化すると考えられた。これらの結果から,CitXESはβ-cryptoxanthinのエステル化に関与することが明らかとなっており,本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,令和元年度に単離したキサントフィルエステル化酵素のCitXES遺伝子の機能解析を行う。大腸菌等を用いてCitXESのリコンビナントタンパク質を発現させ,in vitroにおいて機能解析を行い,β-cryptoxanthinをエステル化するかを確認する。また,マイクロアレイ解析による発現解析により,CitXES類似のDGAT(Diacylglycerol Acyltransferase)遺伝子を単離する。
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