2020 Fiscal Year Research-status Report
イワテヤマナシ遺伝資源を用いた香気関連遺伝子多型と香気成分多型の関連解析
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19K06017
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
片山 寛則 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50294202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 香気関連遺伝子 / AAT / DNAマーカー / 関連解析 / QTL / 香気成分 / 幸水 / イワテヤマナシ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は香りナシの育成に向けて、イワテヤマナシが持つ有用形質の一つである果実の香気成分生成の分子機構を明らかにすることである。香り豊かなイワテヤマナシの在来品種‘ナツナシ’と香りが弱いニホンナシ栽培品種‘幸水’との交配後代を用いた香気成分のQTL解析によりナツナシ’の第2連鎖群(LG2)に最も寄与度の高いQTLを見いだしている。初年度に‘ナツナシ’と‘幸水’のPacBioによるWholeゲノムロングリードNGS解析によりLG2にAAT遺伝子が2種類(AAT1,AAT2)座乗していた。PuAAT1-1(‘ナツナシ’由来)とPaAAT1-1(‘幸水’由来)間の塩基配列は完全一致したが、調節領域に1個のSNPが見つかった。PuAAT2-1とPaAAT2-1ではExonの機能モチーフ中に1アミノ酸と調整領域に1ヶ所in/delが見つかった。また‘ナツナシ’と‘幸水’のNanoporeロングリードIso-seq解析を行い、2種類のAAT1,2の各対立遺伝子座の発現量をリード数に基づき推定した。‘ナツナシ’のPuAAT1-1, 1-2、‘幸水’のPaAAT1-1、1-2は強く発現していたが‘幸水’のPaAAT2-2の発現は弱かった。‘ナツナシ’と‘幸水’の交配後代2集団にてPuAAT1-1, 1-2を含む153kb領域に11種類のDNAマーカーを作成し、genotypingを行ったところ香気成分含有量との関連が強く認められ、‘ナツナシ’のPuAAT1またはPuAAT2は香気合成関連遺伝子と判明した。また香りナシ選抜マーカーとしての有用性も確認できた。PuAAT1-1, 1-2のどちらが香気合成に関連するか明らかにできる両遺伝子間の約47kbの連鎖を切る組換え個体は見つからなかった。今後はPuAAT1,PuAAT2の機能解析やイワテヤマナシ遺伝資源での香気含量との関連解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は‘ナツナシ’と‘幸水’のロングリードNGS解析より得たLG2の2種類のAAT遺伝子と調節領域を含む153kbにわたる領域の配列比較を行った。DNA多型が100ヶ所以上見つかり、最終的に11種類のDNAマーカー(SSR, SNP, in/del)を選抜した。DNAマーカーを‘ナツナシ’x‘幸水’のF1集団と‘筑水’xF1のBC1F1集団にてgenotypingしたところ香気成分量と強い関連が得られたため、香りナシ選抜マーカーとしての有用性を確認した。香りナシの選抜マーカー開発の進捗は順調である。 次に‘ナツナシ’と‘幸水’で見つかったAAT1,AAT2の機能解析についてであるが、2020年春に突発したコロナウイルス感染症対策のため大学構内の閉鎖や実験室の閉鎖が相次ぎ、イワテヤマナシ遺伝資源の芳香個体のサンプリングが出来なかったことなど、影響が予想以上に大きく、進捗はやや遅れ気味である。 そこで予定を変更して‘ナツナシ’と‘幸水’のLG2に座乗する2種類のAAT1,AAT2遺伝子の配列比較から得られた調節領域や遺伝子内での変異がAAT1,2の遺伝子発現に影響しているか調べるため、大腸菌やナシで一過的な過剰発現系の構築を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年では‘ナツナシ’と‘幸水’のLG2に座乗する2種類のAAT1,AAT2遺伝子の配列比較から得られた調節領域や遺伝子内での変異がAAT1,2の遺伝子発現に影響しているか調べるため、大腸菌やナシで一過的な過剰発現系の構築を進めている。これらの結果から、AAT1,AAT2遺伝子の機能が明らかになると考えている。また芳香性イワテヤマナシ遺伝資源間でのAAT1,AAT2遺伝子配列の決定と多型部位と香りとの関連解析を進める。 2020年はコロナウイルス感染症の影響で学会活動も軒並み中止になった。今年度は活発に成果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナウイルス感染症の突発的な発生のため、実験が出来ない状況が続き、予定通り研究が進まなかった。このため2021年度に実験を先送りしたことに伴い研究費も先送りした。
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Research Products
(2 results)