2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on slowing down in the later stage of tomato fruit enlargement
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19K06020
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
片岡 圭子 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (80204816)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トマト / 果実肥大 / 低温 / エチレン / 果皮 / 糖代謝酵素活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 果実肥大の進行に伴う果皮硬度および糖代謝酵素活性の推移とエチレン処理の影響 ‘Micro Tom’を供試品種とし,着果後13,20,27日目にエチレン処理を行った.エスレル処理により果実肥大速度が小さくなる傾向がどのステージでも認められた.また,それぞれの処理6日後にレオメーターを用いて直径1mmのプランジャー,1mm/secの速度で応力曲線を求めた.最大応力,果皮硬度,および応力曲線の傾きは着果26日目で大きくなった.また,いずれもエスレル処理により小さくなる傾向が認められ,エチレンによる果皮硬化が起きているとは考えられなかった.糖代謝酵素活性は,ステージが進行すると高くなった.エスレル処理では,13日目にAI(液胞酸性インベルターゼ),SUS(スクロースシンターゼ)の活性が低くなる傾向があったが有意ではなかった.20日目,27日目の果実ではエスレル処理によってCWAI(細胞壁結合酸性インベルターゼ)活性が有意に高く,NI(細胞質インベルターゼ)活性も高くなる傾向があった. 2.低温管理の影響 ‘Micro Tom’を供試品種とし,着果後18日目から低温(20/8℃)および高温(32/14℃)で栽培した.果実肥大は積算温度に比例し,赤熟にともなう肥大速度低下は顕著ではなかった.低温区で果実肥大速度は小さくなったが成熟まで肥大が維持されて成熟時の果実は大きくなった.乾物率は生育に伴って低下する傾向があり,低温での果実重の増加に水分増加の寄与が大きいことが示された.処理開始12日目の果肉の糖代謝酵素活性は高温区で有意に高かった.処理開始後1週間目の果実硬度は,低温処理区で最大応力,果肉硬度が大きくなったが,果皮硬度は小さくなる傾向が認められた.別の実験でも同様の傾向が認められ,さらに応力曲線の傾きが有意に大きくなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
果実肥大後期のエスレル処理および低温管理による肥大速度への影響を確認でき,果皮硬度の測定方法についてほぼ確定できた.当初想定していたエスレルによる果皮硬化は否定されたが,エスレルによる糖代謝酵素活性の低下,すなわちシンク活性低下の果実肥大抑制への関与を排除するエビデンスが概ね得られた.低温管理の影響については水分流入の継続と果皮硬度低下が示唆され,シンク活性に関わる糖代謝酵素活性の関与は概ね否定された.しかし,高温管理とエスレル処理に共通してCWAI活性の上昇の傾向が認められたことは新しい知見であり,今後の方向性が見いだせたことから,当初計画とほぼ同等と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
低温処理による果皮硬度低下が示唆されたので低温下でのPOX活性について確認すると同時に,組織学的観察によって外果皮細胞構造やクチクラの構造・厚みなどについて検討する.エスレル処理による果実肥大速度抑制の機作については,高温管理と共通する糖代謝酵素,特にCWAIへの処理の影響について再確認する.さらに,塩ストレス栽培による小果化について,乾物増加,水分含量,果皮硬化,糖代謝酵素活性,POX活性について検証し,高温またはエスレル処理との共通項を見出す.
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Causes of Carryover |
購入予定のレオメーターの見積もりを再検討し,当初の申請機種と同等機能で低価格である機種を選定したことから次年度使用が生じた.今年度の実績から,ターゲットとする酵素の活性について多数回の確認が必要であり,試薬消費が増加することが見込まれ,試薬,栽培資材,および塩ストレス負荷装置作成に50万円,学会での口頭発表旅費に7万円程度の支出を予定している.
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