2019 Fiscal Year Research-status Report
アスパラガスの萌芽にフルクタン代謝機構の果たす役割
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19K06021
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
上野 敬司 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (90441964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 高広 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (60621498)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アスパラガス / フルクタン / フルクタン加水分解酵素 / フルクタン合成酵素 / ケストース |
Outline of Annual Research Achievements |
アスパラガスの根(貯蔵根)に蓄積する貯蔵糖、フルクタンはアスパラガスの可食部(若茎)が萌芽する時期に減少することから、このフルクタンは若茎を生成するためのエネルギーと考えられているがどのように利用され、エネルギーとなっているのかよくわかっていない。これまでにこのフルクタンの分解に関与する酵素6G&1-FEHをコードする遺伝子aoeh4を見出し、若茎を生成する時期の貯蔵根で遺伝子発現が上昇することを明らかにしている。しかし、この他のフルクタン加水分解酵素のアイソザイムやフルクタン合成酵素がどのように変動し、フルクタン量を制御しているのかわかっていない。 2019年度の試験ではアスパラガス若茎の収穫時期にフルクタン分解及び合成酵素遺伝子がどのように変動するかを調べた。アスパラガスのサンプルには農業現場のモデルとして1.5年株を用いた。その結果、フルクタン合成酵素遺伝子であるaoft1, aoft2, aoft3はいずれも、若茎の収穫時期に貯蔵根において発現量の減少、これらの翻訳産物の酵素活性の減少、フルクタンの減少が確認された。またフルクタン加水分解酵素遺伝子ではaoeh4の遺伝子発現上昇から遅れて収穫後半にフルクタン加水分解酵素候補遺伝子であるaoeh3遺伝子ならびにスクロース分解酵素(インベルターゼ)候補遺伝子であるaoINVのわずかな上昇が確認された。現在、栽培環境を調節した実験室モデルとして2ヶ月苗のポット栽培株を用いて、これらの遺伝子変動を調査中である。 収穫後半にわずかに遺伝子発現上昇が見られたaoeh3及びaoINV遺伝子の組み換えたんぱく質をPichia pastorisで作製し、その性質を調べた。aoeh3については組み換えタンパク質を得ることができず、aoINVについては液胞型インベルターゼをコードする遺伝子であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アスパラガスの農業現場のモデルとして1.5年株を用いて、フルクタン代謝関連酵素遺伝子(合成酵素3種、分解酵素5種)の変動を調査し、それらの遺伝子の翻訳産物の酵素活性、フルクタン・フルクトオリゴ糖の変動を調査した。アスパラガス若茎萌芽時にフルクタン合成酵素遺伝子が抑制されること、フルクタン分解酵素遺伝子の一部が誘導されることを明らかにし、ある程度、目的であるアスパラガス萌芽時にどの遺伝子がよく働くのかを把握することを達成している。またこれを検証するため栽培環境を調節した実験室モデルの2ヶ月苗のポット栽培株の栽培及びサンプリングを終えており、現在解析中である。2020年度には調査が進むものと予想される。 組み換えタンパク質の酵素性質の評価についてaoINV遺伝子については、液胞型インベルターゼであることを明らかにすることができた。当初、アミノ酸配列の類似性からフルクタン合成酵素である可能性も含めて解析を進めた。予想には反したがフルクタン分解にともない生成されるスクロースの代謝に関わる酵素であり、アスパラガス若茎萌芽に関わる重要な遺伝子であると考えられ、今後、他のフルクタン加水分解酵素との関わりなどを考察する上で重要な知見を得ることができた。aoeh3遺伝子については組み換えタンパク質を得ることができなかったため今後の検討課題とする。 一部、検討課題を残しているものの、ある程度、研究目的が達成されつつあることから区分を「(2)おおむね順調に進展している。」に設定した。
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Strategy for Future Research Activity |
ポット栽培株のアスパラガスを用いて遺伝子発現変動調査を進める。また貯蔵根だけでなく他の部位(芽や吸収根、茎など)に調査対象を広げ、他の部位でのフルクタン・スクロース変動を調査し、アスパラガス若茎収穫に及ぼすフルクタンの影響を考察する。 これまでの予備調査において、これまで解析を進めているものの他に、フルクタン分解酵素候補遺伝子が複数、存在することを把握している。これらの遺伝子発現変動、組み換えタンパク質を用いた解析をすすめる。
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Causes of Carryover |
実験を一時中断(2-3月)したことにより年度末に購入予定であった消耗品や液体窒素等の購入を見送ったため。消耗品として使用する予定である。
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